第5章 日本の仕組みの特徴
ここまで、3 つの型、社会保険の歩み、6 か国の仕組み、OECD の数字を見てきました。
この章では、それらと並べたときの日本の仕組みの特徴を、国の資料の説明と数字でまとめます。
最後に、介護保険をドイツと韓国と比べます。
日本の特徴
- 国民皆保険1961年から国民全員が公的な医療保険に
- 窓口の負担3割70 歳未満。窓口では自己負担分だけを払う
- 病院のうち医療法人69.8%8,001 病院のうち 5,585(2025 年 10 月 1 日)
- 介護保険2000年からドイツは 1994 年に法の成立、韓国は 2008 年
平成 23 年版 厚生労働白書、我が国の医療保険について、令和 7 年 医療施設調査
国の資料が挙げる日本の特徴
厚生労働省は、日本の国民皆保険制度の特徴を、次の 4 つにまとめています。
【日本の国民皆保険制度の特徴】① 国民全員を公的医療保険で保障。② 医療機関を自由に選べる。(フリーアクセス)③ 安い医療費で高度な医療。④ 社会保険方式を基本としつつ、皆保険を維持するため、公費を投入。
厚生労働省「我が国の医療保険について」PDF 1 頁(厚生労働省PDF)
これは国の説明の文です。
この講座では、①、②、④ を第 3 章と第 4 章の比べ方で確かめます。
③ の医療費については、第 4 章の数字(GDP の 10.6%、1 人あたり 5,790 ドル)を示すにとどめます。
だれでも入り、どこでもかかれる
白書は、国民皆保険を次のように説明しています。
日本では、国民全てが公的な医療保険に加入し、病気やけがをした場合に「誰でも」、「どこでも」、「いつでも」保険を使って医療を受けることができる。
平成 24 年版 厚生労働白書 第 1 部 第 3 章 印字 42 頁(厚生労働省PDF)
窓口では、自己負担分だけを払う
日本の医療保険は、現物給付が原則です(厚生労働省PDF)。
患者は窓口で自己負担分だけを払い、残りは保険者が審査を経て医療機関に払います。
1950 年の勧告も、療養の給付を「原則として現物給付で行い,」と書いていました(国立社会保障・人口問題研究所PDF)。
フランスの外来は、いったん全額を払ってあとで払い戻される償還払いが基本でした(第 3 章)。
1 か月の負担には、所得に応じた上限がある(高額療養費制度)。
出典: 我が国の医療保険について PDF 4 頁(厚生労働省PDF)
1 か月の窓口の負担が上限を超えると、超えた分は高額療養費として保険から払われます。
入院では、窓口での支払いを上限までにとどめる仕組みがあり、外来でも 2012 年 4 月から、同じ医療機関で上限を超える場合に同じ仕組みが入りました(厚生労働省PDF)。
窓口の負担と高額療養費制度は、医療費の見える化講座の第 1 章「窓口で払うのは一部だけ」で詳しく解説しています。
財源は保険料が中心で、公費も入る
病院の約 7 割は医療法人
数字に表れる特徴
第 4 章の数字から、日本は、病床が多く、急性期の平均在院日数が長く、医師が OECD 平均より少なく、65 歳以上の割合が最も高い国だと分かります。
ただし病床と受診の回数は、日本の数え方がほかの国と違う点があります(第 4 章の注)。
これらの数字が今の地域医療構想や医師の働き方とどう関わるかは、病院と行政の役割分担講座と医療制度の歩み講座で、国の資料に沿って解説しています。
介護保険は、ドイツ、日本、韓国
医療保険とは別に、介護を社会保険で支える国があります。
この講座で取り上げる国では、ドイツ、日本、韓国です。
保険料と自己負担は、3 か国で同じ時点の国の資料がそろわないため、図に入れず本文に書いた。
出典: 平成 23 年版 厚生労働白書 印字 67 頁(厚生労働省PDF)、第 5 回 社会保障審議会介護保険部会(2003 年 10 月 27 日)資料(厚生労働省)、第 62 回 社会保障審議会介護保険部会(2016 年 8 月 31 日)資料 3(厚生労働省PDF)、2025 年 海外情勢報告 ドイツ(厚生労働省PDF)、韓国(厚生労働省PDF)、平成 18 年版 厚生労働白書(厚生労働省PDF)
日本の介護保険は、白書の言葉で「社会全体で高齢者介護を支える仕組みとして、2000(平成12)年4月にスタートした。」制度です(厚生労働省PDF)。
平成 23 年版の白書は、新しい社会保険の創設が「世界的にもドイツに続くものであった」と書いています(厚生労働省PDF)。
韓国の高齢者長期療養保険は、2008 年に入った社会保険で、国民健康保険公団が保険者です。
保険料は健康保険料の 13.14%(2026 年度)で、利用できるのは原則 65 歳以上の人です。
自己負担は、施設が 20%、在宅が 15% です(厚生労働省PDF)。
日本の介護保険と後期高齢者医療制度の違いはコラム「介護保険と後期高齢者医療保険の違い」で、介護保険ができた経緯は医療制度の歩み講座の第 5 章で解説しています。
この講座のまとめ
日本の医療保険は、社会保険の方式で、1961 年から国民全員が入っています。
どの医療機関にもかかれて、窓口では自己負担分だけを払います。
病院の多くは民間の医療法人が開いていて、病床は多く、医師は OECD 平均より少なく、65 歳以上の割合は OECD の中で最も高い国です。
同じ社会保険の国でも、ドイツやフランスとは保険者の形、窓口の負担、かかり方が違います。
日本の医療費をだれがどう払っているかは医療費の見える化講座、制度が今の形になった経緯は医療制度の歩み講座、病院と行政の役割は病院と行政の役割分担講座で解説しています。
この章の一次資料
- 我が国の医療保険について(厚生労働省PDF) PDF 1 頁、4 頁、5 頁
- 平成 24 年版 厚生労働白書 第 1 部 第 3 章 日本の社会保障の仕組み(厚生労働省PDF) 印字 42 頁
- 平成 23 年版 厚生労働白書 第 1 部 第 2 章 社会保障制度の発展を振り返る(厚生労働省PDF) 印字 67 頁
- 平成 23 年版 厚生労働白書 第 1 部 第 3 章(厚生労働省PDF) 印字 102 頁
- 社会保障制度審議会 社会保障制度に関する勧告 1950 年 10 月 16 日(国立社会保障・人口問題研究所PDF) 第 2 節
- 平成 18 年版 厚生労働白書 第 2 部 第 5 章(厚生労働省PDF) 印字 252 頁
- 2025 年 海外情勢報告 第 2 章 社会保障施策の概要と最近の動向(厚生労働省)(ドイツ(厚生労働省PDF)、韓国(厚生労働省PDF))
- 第 62 回 社会保障審議会介護保険部会 資料 3 2016 年 8 月 31 日(厚生労働省PDF)
- 第 5 回 社会保障審議会介護保険部会 資料 2003 年 10 月 27 日(厚生労働省)
- 第 100 回 社会保障審議会医療保険部会 資料 1-4 2016 年 11 月 18 日(厚生労働省PDF) PDF 4 頁(選定療養)
- 令和 7 年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況(厚生労働省)
制度や数値は掲載時点の情報です。最新の内容は所管の原文でご確認ください。 国の仕組みは厚生労働省の 2025 年 海外情勢報告、数字は OECD の Health at a Glance 2025 によります。国ごとに数字の年と定義が違います(各図の注を参照)。国の優劣を示すものではありません。 内容の誤りは訂正受付窓口からお知らせください。