第3章 6 か国の仕組み

執筆者/監修

病院ドック編集部

病院ドック運営(株式会社ウェブリク)

病院ドックを運営する株式会社ウェブリクの編集部が、病院の運営にかかわる制度と行政の仕組みを、公的資料をもとに要点をしぼって解説します。

一般の方の目線で医療を分かりやすく伝えることを目指しています。

この章では、6 か国の医療の仕組みを、だれが入るか、窓口でいくら払うか、財源、最初にどこにかかるかの 4 つの項目で並べます。
国の仕組みは 2025 年 海外情勢報告、最初にどこにかかるかは厚生労働省の審議会の 2016 年の資料によります。
6 か国を 2 つずつ並べて比べるには、道具の国別カードを使ってください。

この章の数字

  • ドイツの疾病金庫932026 年 1 月
  • フランスの一般制度88%国民に占める割合
  • 英国の NHS1948年から一般の医療は無料
  • アメリカの無保険者2,711万人8.0%。2024 年

2025 年 海外情勢報告(ドイツ、フランス、英国、アメリカの節)

日本

日本社会保険の方式だれが入るか国民全員(1961 年から)¥窓口の負担70 歳未満は 3 割最初にかかる所どの医療機関にも

日本は、国民全員がいずれかの公的な医療保険に入る国民皆保険です。
働く人の保険(被用者保険)と、住む地域の保険(国民健康保険)、75 歳以上の後期高齢者医療制度があります(厚生労働省PDF)。
窓口の負担は年齢で決まり、70 歳未満は 3 割です(厚生労働省PDF)。
どの医療機関にもかかれます。
日本の仕組みの特徴は、第 5 章で詳しく見ます。

ドイツ

ドイツ社会保険の方式保険者疾病金庫 93(2026 年 1 月)公的医療保険の加入者7,461 万人(2025 年)¥保険料率14.6%+追加 2.9%外来の自己負担なし(2013 年に廃止)

ドイツの公的医療保険は、地区や企業などを単位とする公法人の疾病金庫が保険者です。
疾病金庫の数は再編で減っていて、2026 年 1 月現在 93 です(厚生労働省PDF)。
一定の所得までの被用者は公的医療保険に強制加入で、加入者は家族を含めて 7,461 万人(2025 年)です。
所得の高い被用者、自営業者、公務員などは強制加入ではありませんが、2009 年 1 月から、公的医療保険か民間医療保険のどちらかに入ることが義務になりました(厚生労働省PDF)。

窓口の負担は、海外情勢報告の言葉で「外来については 2013 年より自己負担が撤廃され、入院については 1 日につき 10 ユーロ(ただし年間 28 日分が限度)、薬剤費については製品価格の 10%(下限 5 ユーロ、上限 10 ユーロ)である。」です(厚生労働省PDF)。

財源は保険料が中心です。
一般保険料率は 14.6%(労使折半)で、追加保険料率は 2026 年の推計の平均で 2.9%(労使折半)です。
保険料はいったん医療基金に集められ、加入者の年齢や病気の状況を考えて各疾病金庫に配られます(厚生労働省PDF)。

フランス

フランスの医療保険は、職業ごとに強制加入の制度が分かれています。
最も大きい一般制度は、民間の給与所得者などが入り、国民の 88% をカバーしています(加入者 約 6,540 万人。2024 年)(厚生労働省PDF)。
日本の国民健康保険のような地域の保険はなく、退職したあとも働いていたときの職域の保険に入り続けます(厚生労働省PDF)。

償還払い(フランスの外来)窓口で全額を払うあとで払い戻される外来 70%、入院 80%、薬 65%現物給付(日本の原則)窓口では自己負担分だけ

窓口では、いったん費用を払い、あとで保険から払い戻される償還払いが基本です。
保険から払い戻される割合(償還率)は、外来 70%、入院 80%、通常の薬 65% が原則です。
かかりつけ医に相談せずに受診すると、外来の償還率は 30% に下がります。
残りの自己負担は、多くの場合、共済組合などの補足の制度がカバーしています(厚生労働省PDF)。
入院などは医療機関に直接払われ、2015 年の法律で、外来も医療機関への直接払いが順に進んでいます。
日本の医療保険は、窓口では自己負担分だけを払う現物給付が原則です(第 5 章)。

財源は、保険料(使用者が給与の 13.0% を負担)のほか、一般社会拠出金(CSG)や、たばこや酒などの目的税が大きな割合を占めます。
2024 年の割合は、CSG 23.5%、目的税 30.4%、国庫 2.6% で、保険料の収入は全体の 36.7% でした(厚生労働省PDF)。

英国

英国税の方式(NHS)一般の医療無料¥外来の処方薬1 処方 9.90 ポンド財源税が中心(約 80%)最初にかかる所登録した GP

英国の医療は、国民保健サービス(NHS)が全住民に原則無料で提供しています。
一般の医療は無料で、外来の処方薬は 1 処方 9.90 ポンドの定額です。
60 歳以上や 16 歳未満などは処方薬も無料で、海外情勢報告は「薬剤については免除者が多い」と書いています(厚生労働省PDF)。

財源は税が中心で、国民保険料の一部(2 割程度)も NHS に回ります。
政府の負担は約 80% です(厚生労働省PDF)。

かかり方には決まった順序があります。

国民は、救急医療の場合を除き、①あらかじめ登録した一般家庭医( GP:General Practitioner)の診察を受けた上で、②必要に応じ、一般家庭医の紹介により病院の専門医を受診する仕組みとなっている。

2025 年 海外情勢報告 英国 p.6(厚生労働省PDF)

スウェーデン

スウェーデン税の方式(レギオン)担当21 の広域自治体¥外来の上限年 1,450 クローナ(2026 年)85 歳以上の外来無料ケア保証医師の診療は 3 日以内

スウェーデンの医療は、20 のレギオンと、どのレギオンにも属さないゴットランドの、計 21 の広域自治体が担当します(厚生労働省PDF)。
医療機関の多くはレギオンが置いて運営し、医師や看護師はレギオンの職員です。
プライマリケア(最初にかかる医療)を担う地域医療センターは、約半数が民間ですが、その費用もレギオンが払います(厚生労働省PDF)。

窓口の負担は、法律の上限の範囲でレギオンごとに決めます。
2026 年の全国の上限は、外来が年 1,450 クローナ、薬が年 3,800 クローナ、入院が 1 日 130 クローナです。
85 歳以上の外来は、法律で無料です。
財源は、レギオンの税収(主に住民の所得税)で、保険料はありません(厚生労働省PDF)。

かかり方では、2010 年から、すべてのレギオンで、患者が初期医療の医療機関を選べるようになりました。
待つ期間の目安(ケア保証)も決まっていて、プライマリケアへの電話やチャットは当日中、プライマリケアの医師の診療は 3 日以内、専門医の診療と手術などの治療はそれぞれ 90 日以内です(厚生労働省PDF)。

アメリカ

アメリカには、国民全員を対象にした公的な医療保険はありません。
公的な制度は、65 歳以上の高齢者と 65 歳未満の障害者などのメディケア、低所得者のメディケイド、低所得の世帯の子どものための CHIP などです(厚生労働省PDF)。
多くの人は、勤め先が用意する医療保険などの民間保険に入ります。

図 3-3 アメリカの医療保険の加入の内訳(2024 年)
総人口 3 億 3,710 万人(2024 年)民間保険2 億 2,270 万人(66.1%)うち事業主が提供する医療保険1 億 8,130 万人(53.8%)メディケア6,436 万人(19.1%)メディケイド5,944 万人(17.6%)CHIP725 万人無保険者2,711 万人(8.0%)

総人口 3 億 3,710 万人に対する割合。
複数の保険に入る人がいるため、割合の合計は 100% にならない。
出典: 2025 年 海外情勢報告 アメリカ 図 2-2-4(厚生労働省PDF)

窓口の負担は、入っている保険ごとに、年間の免責額(一定の額までは自分で払う)、定額、割合などが違います(2016 年の資料(厚生労働省PDF))。
財源も保険ごとに違います。
OECD の統計は、ACA の加入の義務があるため、アメリカの民間保険を「義務的な保険」に分類しています。
そのため、この分類で見ると公的な財源の割合が日本に近く見えますが、政府と社会保険の財源だけで数えると、医療費の約 54% です(Health at a Glance 2025 図 7.11(OECD))。

窓口の負担の形

図 3-1 窓口の負担の形(6 か国)
国負担の形中身日本割合70 歳未満は 3 割。年齢と所得で 1〜3 割フランス償還率外来 70%、入院 80%、薬 65% が払い戻されるドイツ定額外来はなし。入院 1 日 10 ユーロ、薬 10%(5〜10 ユーロ)スウェーデン定額レギオンごと。全国の上限は外来 年 1,450 クローナ英国無料一般の医療は無料。処方薬は 1 処方 9.90 ポンドアメリカ保険ごと年間の免責額、定額、割合などが保険ごとに違う

日本の高額療養費、フランスの補足の制度など、負担を軽くする仕組みは図に入れていない。
出典: 2025 年 海外情勢報告(各国の表)(厚生労働省)、我が国の医療保険について(厚生労働省PDF)、アメリカは第 100 回 社会保障審議会医療保険部会 資料 1-4(2016 年)(厚生労働省PDF)

窓口の負担の形は、国ごとに違います。
日本は費用の割合、フランスは保険から払い戻される割合(償還率)、ドイツ、スウェーデン、英国の処方薬は定額で、英国の一般の医療とドイツの外来は無料です。
アメリカは、入っている保険ごとに違います。

最初にどこにかかるか

図 3-2 最初にどこにかかるか(6 か国)
国かかりつけ医外来と、その中身英国登録制あり登録した GP からGP の紹介で病院の専門医へ。1948 年からフランス登録制ありフリーアクセスかかりつけ医を通さないと償還率が下がる。2004 年からドイツ登録制ありフリーアクセス家庭医が中心の診療を選ぶ人は国民の 5%(2016 年)。2008 年からスウェーデン選択制医療機関を選ぶ初期医療の医療機関を選べる(2010 年から)。ケア保証アメリカ登録制なし保険ごとの契約医保険ごとに契約した医師がいる日本登録制なしフリーアクセスどの医療機関にもかかれる

英国、フランス、ドイツ、アメリカは第 100 回 社会保障審議会医療保険部会 資料 1-4(2016 年 11 月。出典は平成 27 年度 厚生労働科学研究)(厚生労働省PDF)。
スウェーデンは 2025 年 海外情勢報告(厚生労働省PDF)。日本は平成 24 年版 厚生労働白書(厚生労働省PDF)

かかりつけ医の登録制は、英国、フランス、ドイツにあります。
ただし、英国は登録した診療所でしか受診できないのに対し、フランスとドイツは登録しても外来は自由に受診できます。
2016 年の審議会の資料は、4 か国の登録制を「登録診療所のみ受診可」(英国)、「かかりつけ医は登録制(外来はフリーアクセス)」(フランス、ドイツ)、「無(保険毎に契約医あり)」(アメリカ)と並べています(厚生労働省PDF)。

国別カードで比べる

道具国別カード並べる国6 か国項目型、制度、負担、財源など比べ方2 か国を選んで左右に

6 か国の仕組みは、道具の国別カードで、2 か国ずつ並べて比べられます。
カードには、この章の 4 つの項目に加えて、制度が始まった年、介護の保障、第 4 章の数字を載せています。

次の章では、医療費、病床、医師などの数字を OECD の統計で比べます。

この章の一次資料

制度や数値は掲載時点の情報です。最新の内容は所管の原文でご確認ください。 国の仕組みは厚生労働省の 2025 年 海外情勢報告、数字は OECD の Health at a Glance 2025 によります。国ごとに数字の年と定義が違います(各図の注を参照)。国の優劣を示すものではありません。 内容の誤りは訂正受付窓口からお知らせください。