第2章 医療勤務環境改善支援センターという相談先

執筆者/監修

病院ドック編集部

病院ドック運営(株式会社ウェブリク)

病院ドックを運営する株式会社ウェブリクの編集部が、病院の運営にかかわる制度と行政の仕組みを、公的資料をもとに要点をしぼって解説します。

一般の方の目線で医療を分かりやすく伝えることを目指しています。

勤務環境の悩みを、どこに相談すればよいのでしょうか。
社会保険労務士に頼めば費用がかかる、労働局に聞けば指導を受けるのではないか、と迷う事務長は少なくありません。
医療法は、そのために都道府県に相談の拠点を置いています。
医療勤務環境改善支援センター、略して「勤改センター」です。
この章では、国の資料に書かれている勤改センターの仕組み、相談できること、使われ方、そして 2027 年の機能強化を特集します。

都道府県が置く拠点

勤改センターの根拠は、医療法第 30 条の 21 です。
都道府県は、医療従事者の勤務環境の改善を促進するため、相談に応じて情報の提供と助言を行い、調査と啓発を行い、必要な支援を行うよう努めるものとされています。
事務の全部または一部は、厚生労働省令で定める者に委託できます。
委託を受けた者には守秘の義務があります。

都道府県は、医療従事者の勤務環境の改善を促進するため、次に掲げる事務を実施するよう努めるものとする。
一 病院又は診療所に勤務する医療従事者の勤務環境の改善に関する相談に応じ、必要な情報の提供、助言その他の援助を行うこと。

医療法 第 30 条の 21 第 1 項(抜粋)(e-Gov 法令)

2014 年 10 月の施行から設置が始まり、2017 年 3 月までに全都道府県に置かれました。
運営の形は 2 つあり、都道府県が直接運営しているのが 19、県医師会や病院協会などの団体に委託しているのが 28 です(令和 7 年度の調査。
医師の働き方改革に係る現状等(厚生労働省PDF)63 ページ)。

47 の窓口の住所と電話番号は、いきいき働く医療機関サポート Web の一覧(勤改センター一覧(いきサポ))で引けます。
一覧に運営主体の欄はありませんが、住所の「医師会館内」「県庁内」から読み取れます。
一覧には、医業経営の相談窓口と労務管理の相談窓口が異なる場合がある旨の注記があります。

2 種のアドバイザーと運営協議会

勤改センターには、2 種のアドバイザーが置かれています。
労務の専門家と、経営の専門家です。

図 2-1 勤改センターによる医療機関への支援の仕組み
都道府県医療法第 30 条の 21 に基づいて設置直営 19、医師会や病院協会などへ委託 28運営協議会(都道府県が主催)労働局、大学病院、医師会、看護協会、病院団体社労士会、医業経営コンサルタント協会など支援方針を協議医療勤務環境改善支援センター(勤改センター)窓口と電話の相談、個別訪問による伴走支援、院内研修、利用の勧奨。相談は無料医療労務管理アドバイザー社会保険労務士など。労働局の委託事業(労働基準局)労働時間の管理、36 協定、宿日直許可、シフト、研鑽医業経営アドバイザー医業経営コンサルタントなど。都道府県の基金事業(医政局)診療報酬、補助制度、組織マネジメント、PDCA の運用設置病院、診療所質問と相談 → 助言、訪問、計画作成と申請の支援利用が立入検査のきっかけになることはない相談出典: 検討会 資料 2-1 の 59〜64 ページ、いきいき働く医療機関サポート Web「勤務環境の改善とは」。

出典: 医師の働き方改革に係る現状等 59 ページ(厚生労働省PDF)を元に作成

  • 医療労務管理アドバイザー社会保険労務士など。
    労働時間の管理、36 協定、宿日直許可、時間外労働に係るシフトの作成など、労務管理全般の課題を支援します。
    都道府県労働局の委託事業(医療労務管理支援事業)として配置され、所管は厚生労働省の労働基準局です。
    資料 2-1 の 59 ページ
  • 医業経営アドバイザー医業経営コンサルタントなど。
    診療報酬制度、関連する補助制度の活用、組織マネジメントなど、経営管理面の課題を支援します。
    都道府県の基金事業として配置され、所管は医政局です。
    資料 2-1 の 59 ページ

2 種のアドバイザーは一体で支援することになっています。
第 2 回の検討会の資料は、労務管理か医業経営のどちらか一方の希望であっても両方のアドバイザーで訪問する、随時情報を共有する、といったセンター内の連携が不可欠だと書いています(勤改センターの在り方・短縮目標ライン等(厚生労働省PDF)7 ページ)。

勤改センターの運営方針は、都道府県が主催する運営協議会で決めます。
都道府県労働局、労務管理支援事業の受託者、大学病院、都道府県医師会、看護協会、病院団体、社会保険労務士会、医業経営コンサルタント協会などが参画し、連携して医療機関の支援方針を決める仕組みです。

何を相談できるか

勤改センターの2 種のアドバイザー医療労務管理アドバイザー社会保険労務士など相談の例労働時間管理と宿日直許可医業経営アドバイザー医業経営コンサルタントなど相談の例診療報酬、補助制度、経営管理両方で訪問することも一方の希望でも連携して対応

資料は、勤改センターの助言と支援の例を、医療従事者の勤務環境改善と、医師の働き方改革の 2 つに分けて挙げています。
労務の基本から、計画の作成、特例水準の指定申請まで、相談の範囲は広く取られています。

支援の形は次の 4 つです。
積極的な利用勧奨など、地域の事情に応じたプッシュ型の支援も実施すると書かれています。

  • 窓口と電話の相談
  • 個別訪問 伴走的な支援。
    オンラインも可能。
  • 院内研修の講師
  • セミナーの開催
  • 勤務環境改善の側医療従事者の全職種にかかわる相談。
    • 基本的な労務管理(労働時間管理、36 協定など)の助言
    • 勤務環境改善マネジメントシステムの取組方法やプロセスの助言と支援(医療従事者へのアンケート調査、多職種による意見交換会、計画作成の支援)
    • 関係機関と連携した具体的な取組への助言(ハラスメント対策、育児や介護との両立支援、メンタルヘルス対策、キャリア形成に関する助言、研修、好事例の紹介)
    資料 2-1 の 59 ページ
  • 医師の働き方改革の側医師の上限規制(第 3 章)にかかわる相談。
    • 副業・兼業、研鑽、宿日直許可取得後の労務管理
    • 特例水準の指定申請に向けた取組の支援(労働時間短縮計画の作成支援、医療機関勤務環境評価センターの評価受審支援)
    • PDCA サイクルの実施
    • タスク・シフト/シェアと ICT の導入
    • 面接指導と勤務間インターバルの実施に関する取組の支援
    資料 2-1 の 59 ページ

実際の相談はどんな内容が多いのでしょうか。
令和 6 年度の活動実績を、2 種のアドバイザーに分けて見ます。

  • 労務管理アドバイザー業務は「相談対応」と「個別支援」が 9 割を超える。
    相談の内容は「労働時間の管理」と「宿日直許可」が多い。
    • その他の例: 宿日直や振替休日や変形労働時間制に関連する割増賃金の計算方法
    • ハラスメントの院内研修
    • 医療法第 25 条第 1 項に基づく立入検査に関わる支援、立入検査後の対応と働き方改革
    • マネジメントシステムの運営支援
    資料 2-1 の 63 ページ
  • 医業経営アドバイザー業務は「個別支援」が 7 割で最も多い。
    相談の内容は「経営改善」が 2 割を超えて最多。
    • その他の例: 宿日直許可取得後のフォロー
    • 派遣医師の確保
    • 病床運営
    • 組織マネジメント
    資料 2-1 の 64 ページ

無料で、立入検査にはつながらない

勤改センターを使うときに事務長が気にする点が 2 つあります。
費用と、監督官庁との関係です。
国のサイトは、どちらにもはっきり答えています。

医療機関の利用料は無料です。
勤改センターを利用したことをきっかけに、労働基準監督署等が立入検査を行うことはありません。

勤務環境の改善とは(いきサポ)の記述を要約

相談は無料で、利用が立入検査につながることはありません。
医療法第 25 条の立入検査(都道府県知事、保健所設置市の市長、特別区の区長が行うもの)も、労働基準監督署の監督も、勤改センターへの相談とは別の仕組みです。
勤改センターの業務を委託された者には、知り得た秘密を漏らしてはならない義務が医療法第 30 条の 21 第 5 項で課されています。

図 2-2 勤改センターの利用の流れ(国の資料の支援の例を並べたもの)
1相談する窓口か電話、メール労務か経営かを添えて2訪問を受けるアドバイザーが来院(オンラインも可)3課題を整理する職員アンケート多職種の意見交換会4計画と実行の伴走マネジメントシステムの導入、PDCA の助言5申請と受審の支援宿日直許可、時短計画評価センター、指定申請相談は無料。どの段階からでも使える。労務管理と医業経営の一方だけの希望でも、両方のアドバイザーで対応することがある(検討会 第 2 回 資料 3)。

出典: 医師の働き方改革に係る現状等 59 ページ、勤改センターの在り方・短縮目標ライン等 7 ページ(厚生労働省PDF)

流れは、窓口か電話で相談するところから始まり、必要に応じてアドバイザーが訪問(オンラインも可能)し、職員へのアンケートなどで課題を整理し、計画の作成と実行に伴走します。
特例水準の指定申請や評価センターの受審が必要な病院には、その手続きの支援もあります。

どのくらい使われているか

令和 7 年度に医療機関を対象に行われた調査では、勤改センターの利用状況は病床規模ではっきり分かれています。
「すでに利用したことがある」と答えた医療機関は、500 床以上で 78.6%、400〜499 床で 56.5%、300〜399 床で 51.7% と、300 床以上では過半数です。
一方、200〜299 床では 29.0%、100〜199 床では 29.9%、100 床未満では 21.2% にとどまります(資料 2-1 の 66 ページ)。

図 2-3 勤改センターの利用状況(病床規模別。令和 7 年度調査)
0%20%40%60%80%100%500 床以上n=13178.6%9.9%9.9%400〜499 床n=6256.5%17.7%21.0%300〜399 床n=12051.7%20.8%6.7%20.8%200〜299 床n=16929.0%30.8%14.2%24.9%100〜199 床n=53629.9%29.3%11.2%28.7%100 床未満n=50421.2%35.9%11.7%29.0%すでに利用したことがある必要性を感じないため、利用していない支援内容や利用方法が分からないため、利用していない自院の経営状況等を知られたくないため、利用していない利用した結果が指導監督部署に共有され、立入検査等を受けるかもしれないので、利用していない存在自体を知らない出典: 令和 7 年度「医療機関における勤務環境改善のための調査分析事業」(検討会 資料 2-1 の 67 ページ)。

出典: 令和 7 年度「医療機関における勤務環境改善のための調査分析事業」。
医師の働き方改革に係る現状等 66 ページ(厚生労働省PDF)

使っていない理由を見ると、小さい病院ほど「必要性を感じないため」と「支援内容や利用方法が分からないため」の割合が高く、「存在自体を知らない」も 100 床未満で 29.0% あります。
「自院の経営状況等を知られたくない」と「利用した結果が指導監督部署に共有され、立入検査等を受けるかもしれない」は、どの規模でも 2% 以下でした。

調査は、小さい病院で勤改センターが知られていないことを示しています。
相談の多くが労働時間の管理と宿日直許可であることと合わせると、医師の上限規制の対象になる特定労務管理対象機関(第 3 章)を中心に使われてきた窓口が、まだ中小の病院に届いていない、という読み方ができます。

国の資料が紹介している 2 つの例

岡山県(県医師会が運営)宿日直許可の伴走 58 機関離職率の低下を目標に月 1 回の訪問と職員アンケート高知県(再生機構に委託)医師確保と一体で支援

検討会の資料は、勤改センターの活動例として 2 つの都道府県を紹介しています。
どちらも、国の資料に載っている例としてそのまま引きます。

1 つ目は岡山県です。
県医師会が運営し、センター長(医師)、事務スタッフ 1 名、医療労務管理アドバイザー 13 名、医業経営アドバイザー 1 名、医療アドバイザー 1 名の体制です。
令和 4 年 4 月から 5 年 11 月の実績は、医師労働時間短縮計画の作成支援 7 医療機関、評価センターの受審支援 6 医療機関、特例水準の指定申請の支援 5 医療機関、宿日直許可申請の伴走型サポート 58 医療機関です。
看護師の離職率が高まった病院からの相談に、事務長や看護部長を交えて月 1 回の訪問支援と職員アンケートを行い、1 年半の支援で離職率の低下を実現した、という事例が載っています(資料 2-1 の 68 ページ)。

2 つ目は高知県です。
勤改センターの業務を、県内の医師確保を担当する一般社団法人高知医療再生機構に委託し、医師確保と勤務環境改善を一つの組織で一体で行っています。
マネジメントシステムの導入支援、特例水準の取得に向けた宿日直許可申請や時短計画作成の支援、認定看護師と特定行為看護師の養成によるタスク・シフト/シェアの推進、他職種で構成する小グループのワークショップが挙げられています(69 ページ)。

都道府県による差と、2027 年の機能強化

都道府県による差を埋める国の仕組みと 2027 年年次活動計画県が毎年度、重点と目標を書くフィードバックシート国が同規模の県と比べて返す第 2 回検討会の論点重点支援、フォローアップ2027 年 4 月から業務効率化の相談も

勤改センターの体制は、都道府県によって差があります。
令和 7 年 4 月 1 日の時点の数字を 4 つ挙げます。
労務管理アドバイザーは約 8 割が常時配置ですが、医業経営アドバイザーはセンターと別の場所に配属されている割合が高くなっています(資料 2-1 の 60〜65 ページ)。

  • 事務担当職員(1 日あたり)2.3人平均。最小 0 人、最大 7 人
  • うち専任0.7人平均
  • 医業経営アドバイザー約 8割スポット対応
  • 相談対応の件数8〜164機関都道府県による幅

国はこの差を埋めるために、都道府県に年次活動計画の作成を求めています。
「医療勤務環境改善支援に向けた年次活動計画の策定等について(依頼)」(令和 6 年 11 月 27 日の事務連絡)が毎年度書くよう求めているのは、次の項目です(勤改センターの在り方・短縮目標ライン等(厚生労働省PDF)4〜6 ページ)。

  • 課題 管内の医療機関が抱える課題。
  • 重点と優先順位 重点的に支援する医療機関の優先順位と支援方針。
  • 支援の方法
  • 設置方法 直営か委託か。
  • 成果目標
  • 自己チェックリスト 活動を評価する。
  • フィードバックシート 厚生労働省が自己チェックリストの結果を分析し、同じ規模の都道府県との比較と取組事例を都道府県に返す。

2026 年 9 月 10 日の第 2 回検討会は、勤改センターの在り方を議題にしました。
論点は 3 つです(9 ページ)。

  • 国の支援体制の拡充、好事例の横展開、ICT 機器の導入と活用について勤改センターが助言できるようにする支援を進める。
  • 都道府県の重点支援特定労務管理対象機関や小児・周産期・救急の医療機関の労務管理の状況(宿日直許可の取得状況を含む)を把握して重点的に支援する。
  • 継続的なフォローアップ相談対応に加えて、継続的なフォローアップの支援を充実させる。

年次活動計画でアウトカム指標を設定している都道府県は一部にとどまり、その多くが医師の労働時間に着目したもので、勤務環境改善全体の成果を測る指標は限定的だという指摘もあります。

2027 年 4 月 1 日施行の改正法(第 1 章)は、都道府県と勤改センターの事務に業務の効率化に関する相談と助言を加え、体制の拡充と機能強化を図るとしています。
勤務環境の改善だけでなく、業務の効率化、ICT の導入についても相談できる窓口になる見込みです。
検討会は第 3 回以降で報告書をまとめる予定で、まとまったらこの章を直します。

自院で確かめること

  • 自院の都道府県の勤改センターの窓口と連絡先を知っているか。
    いきサポの一覧で引けるか。
  • 使ったことがあるか。
    使っていないなら、理由は必要性か、使い方が分からないことか、知られたくないことか。
  • 相談したいことが労務管理(労働時間、宿日直許可、36 協定)か経営(診療報酬、補助制度、組織)かを分けて整理できているか。

医師の上限規制の中身と、2 年たって数字がどう動いたかは第 3 章で見ます。

この章の一次資料

  • 医療法 第 25 条、第 30 条の 21、第 30 条の 22(e-Gov 法令)
  • 医師の働き方改革に係る現状等 令和 8 年度 医師の働き方改革の推進等に関する検討会 第 1 回 資料 2-1 2026 年 7 月 13 日。
    59〜70 ページ(厚生労働省PDF)
  • 勤改センターの在り方・短縮目標ライン等 同 第 2 回 資料 3 2026 年 9 月 10 日。
    3〜9 ページ(厚生労働省PDF)
  • 令和 8 年度 医師の働き方改革の推進等に関する検討会(厚生労働省)
  • 勤務環境の改善とは(いきサポ)、勤改センター一覧(いきサポ)
  • 健康保険法等の一部を改正する法律の成立について(報告)2026 年 6 月 17 日。
    参考資料「医療機関の業務効率化・勤務環境改善への支援」(厚生労働省PDF)

制度や数値は掲載時点の情報です。最新の内容は所管の原文でご確認ください。 労務の適用は個別の事情で異なります。判断に迷うときは、都道府県の医療勤務環境改善支援センターへご相談ください。 内容の誤りは訂正受付窓口からお知らせください。