病院の勤務環境改善講座

勤務環境の改善は、どこから手をつけるのか

医療法は病院に、医療従事者の勤務環境の改善を求めています。
2024 年の医師の上限規制で守るべき決まりになり、2027 年には認定制度が始まります。
医師、看護職員、事務職員まで、国の資料の順に 7 章で解説します。

解説の元は、医療法と労働基準法の条文、厚生労働省の医師の働き方改革の推進等に関する検討会の資料(2026 年 10 月 10 日に確認)、令和 8 年度診療報酬改定の資料、日本看護協会の調査です。
検討会の資料、診療報酬の改定、看護協会の調査、改正法の政省令が出たら更新します。
講座は「国の資料にこう書いてある」までを伝えるもので、個別の労務の判断はしません。

この講座の要点

勤務環境改善マネジメントシステムの 7 つのステップ。
PDCA繰り返す1方針表明2体制整備3現状分析4目標設定5計画の策定6取組の実施7評価・改善1方針表明方針を周知し、取組を始める方針2体制整備多職種の推進チームを作る体制3現状分析客観的な分析で課題を明確に計画(Plan)4目標設定ミッションと現状から目標を5計画の策定目標達成の実施項目を決める6取組の実施1 つずつ着実に、継続的に実行(Do)7評価・改善成果を測り、次の輪へ評価と改善(Check、Act)出典: 医療分野の「雇用の質」向上のための勤務環境改善マネジメントシステム導入の手引き(改訂版)。5 つのシートで進める(第 7 章)。

厚生労働省「勤務環境改善マネジメントシステム導入の手引き(改訂版)」を元に(第 1 章、第 7 章)

  • 医療法は病院に勤務環境の改善を努力義務として求め、2024 年の医師の上限規制で守るべき決まりになり、2027 年 4 月には認定制度が始まります。対象は医師に限らず、看護職員から事務職員までです。
  • 週 60 時間以上働く病院の常勤医は 39.2% から 15.0% に減りました。残る課題と使える支援(都道府県の勤改センター、基金、診療報酬の評価)を、国の資料の数字で確かめられます。
  • 病院ドックは厚生局の届出データから、勤務環境にかかわる施設基準の全国の届出率を集計しています。自院の届出は施設基準ページで確かめられます。届出の有無は体制の一面で、優劣ではありません。

数字で見る

週 60 時間以上働く病院の常勤医は、39.2% から 15.0% に
0%10%20%30%40%50%39.2%平成 28 年(2016 年)N=10,73837.8%令和元年(2019 年)N=8,93721.2%令和 4 年(2022 年)N=11,46615.0%令和 7 年(2025 年)N=13,205週労働時間 60 時間以上の割合(時間外・休日労働 年 960 時間換算)病院の常勤勤務医。兼業先の労働時間を含み、宿日直許可のある宿日直の待機時間を除く。平成 28 年の分析対象は勤務先を問わない常勤勤務医。

時間外・休日労働が年 960 時間(A 水準の上限)に相当する週 60 時間以上の割合。4 回の調査で着実に減りましたが、外科、救急科、産婦人科では 2 割を超えます。

出典: 厚生労働省「医師の働き方改革に係る現状等」令和 8 年度 医師の働き方改革の推進等に関する検討会 第 1 回 資料 2-1(2026 年 7 月 13 日)(2026 年 10 月 10 日取得)

勤務環境にかかわる施設基準を届け出ている病院の割合(全国の診断対象 7,948 院)
  1. 入院ベースアップ評価料職員の賃金改善の体制。令和 8 年度改定で対象職員が広がった 96.3%7,657 院
  2. 医師事務作業補助体制加算医師の書類作成を担う医師事務作業補助者の配置 40.0%3,177 院
  3. 看護職員処遇改善評価料看護職員の賃金改善。夜勤手当に充ててよい 34.8%2,767 院
  4. 急性期看護補助体制加算急性期の病棟に看護補助者を手厚く配置 34.5%2,746 院
  5. 病棟薬剤業務実施加算病棟での薬剤師の業務(薬剤師への分担) 28.1%2,232 院
  6. 看護補助加算看護補助者の配置と協働 25.6%2,036 院
  7. 看護職員夜間配置加算夜間の看護職員の手厚い配置。夜勤を含む負担軽減の計画が要件 19.5%1,548 院
  8. 地域医療体制確保加算医師の時短計画と客観的な労働時間の把握。救急や周産期の病院 15.1%1,197 院

届出の有無は体制の一面です。病院の規模や機能によって、届け出る必要のない基準や、要件を満たせない基準があります。自院の届出は施設基準のページで確かめられます。

出典: 地方厚生局の届出受理医療機関名簿(公表基準日 2026年9月1日 以降)から病院ドックが集計。有効な届出だけを数え、分母は診断対象(20 床以上)の全病院。

左は国の調査(病院の常勤医の 1 週間の労働時間)、右は病院ドックが厚生局の名簿から集計した全国の届出率です。届出の有無は体制の一面で、病院の優劣ではありません。病院ごとの届出は施設基準のページで確かめられます。

章の一覧

  1. 第1章 勤務環境改善は、病院の努力義務です 医療法第 30 条の 19 の努力義務、2014 年からの経緯、マネジメントシステムの 7 つのステップ、2027 年 4 月に始まる認定制度。
  2. 第2章 医療勤務環境改善支援センターという相談先 都道府県が置く無料の窓口。社会保険労務士と医業経営コンサルタントの 2 種のアドバイザー、相談の中身、利用の流れ、岡山県と高知県の例、2027 年の機能強化。
  3. 第3章 医師の働き方改革、施行から 2 年 5 つの水準、追加的健康確保措置、宿日直許可と自己研鑽、時短計画と評価センター、実態調査(39.2% から 15.0% へ)、2026 年度の検討会の論点。
  4. 第4章 看護職員の確保と夜勤 看護師等確保基本指針(2023 年改定)、夜勤の負担と月 72 時間、処遇改善の 2 つの評価料、離職率は小さい病院ほど高い、2040 年の検討会。
  5. 第5章 タスク・シフト/シェアと業務の効率化 2021 年の通知と 13 職種の業務、意識と知識と余力、特定行為研修、医師事務作業補助者と看護補助者、ICT と DX、負担軽減の取組の実施率。
  6. 第6章 診療報酬と基金が評価する体制 勤務環境にかかわる 8 つの施設基準と要件、令和 8 年度改定(加算 2 と評価料)、全国の届出率、基金の区分と 2027 年の新区分、認定制度。
  7. 第7章 ハラスメント、両立、そして計画を作る 2026 年 10 月に義務になったカスタマーハラスメント対策の 5 つの柱、院内のハラスメント、育児と介護との両立、ストレスチェック、マネジメントシステムの 5 つのシートで計画を作る。

道具

医療法と労働基準法の条文、厚生労働省の検討会の資料、診療報酬改定の資料、手引きと、日本看護協会が公表した調査をもとに、病院ドック編集部がまとめました。
国が監修したものではありません。
労務の適用は個別の事情で異なります。判断に迷うときは、都道府県の医療勤務環境改善支援センターへご相談ください。
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