第6章 診療報酬が評価する医療安全の体制

執筆者/監修

病院ドック編集部

病院ドック運営(株式会社ウェブリク)

病院ドックを運営する株式会社ウェブリクの編集部が、病院の運営にかかわる制度と行政の仕組みを、公的資料をもとに要点をしぼって解説します。

一般の方の目線で医療を分かりやすく伝えることを目指しています。

医療安全の体制は、医療法の義務であると同時に、診療報酬の評価の対象でもあります。
令和 8 年度の改定で、医療安全対策加算は加算 1 が 85 点から 160 点、加算 2 が 30 点から 70 点と、倍近くになりました。
この章では、医療安全にかかわる加算と管理料の要件、改定で変わったこと、省令と診療報酬で名前が同じで要件が違う「医療安全管理者」、そして病院ドックが厚生局の届出データから集計した全国の届出率を見ていきます。

医療安全にかかわる 4 つの加算と管理料

診療報酬の施設基準のうち、医療安全の体制を直接の要件にしているものを、講座では 4 つ取り上げます。
どれも地方厚生局に届け出るもので、届出の名簿は公開されています。

図 6-1 医療安全にかかわる加算と管理料が求める体制
医療安全対策加算 1 と 2160 点と 70 点(入院初日)研修(40 時間以上)を修了した医療安全管理者加算 1 は専従、加算 2 は専任医療安全管理部門、全部門の専任職員週 1 回程度のカンファレンス、計画書と記録相談と支援の掲示。加算 1 は別表 2 の集積第 20医療安全対策地域連携加算 1 と 250 点と 20 点加算 1: 専任の医師を部門に配置連携先に年 1 回程度赴いて評価し、評価を受ける加算 2: 加算 1 の医療機関から評価を受ける相互チェックシートなどを参考に項目を決める特定機能病院も加算 1 を算定可能に第 20 の 3、4患者サポート体制充実加算患者と家族の相談窓口専任の医師、看護師、薬剤師、社会福祉士等を標榜時間内に常時 1 名以上各部門に担当者、週 1 回程度のカンファレンス対応と報告のマニュアル、相談の記録医療対話推進者の研修の修了が望ましい第 21 の 2医療機器安全管理料 1常勤の臨床工学技士 1 名以上医療安全管理部門医療機器安全管理責任者従業者への研修保守点検の計画と実施生命維持管理装置の治療の管理を評価特掲 第 12 の 2出典: 基本診療料の施設基準等(保医発 0305 第 7 号)、特掲診療料の施設基準等(保医発 0305 第 8 号)。令和 8 年度改定(2026 年 6 月 1 日施行)。

出典: 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて 第 20、第 21、第 21 の 2(厚生労働省PDF)、特掲診療料の施設基準等 第 12 の 2(厚生労働省PDF)

  • 医療安全対策加算 1 と 2研修を修了した医療安全管理者(加算 1 は専従、加算 2 は専任)、医療安全管理部門、部門の業務指針、全部門の専任の職員、委員会との連携、相談と支援が受けられる旨の掲示。
    週 1 回程度のカンファレンス、業務改善計画書と活動実績の記録。
    入院初日に 160 点(加算 2 は 70 点)。
    第 20
  • 医療安全対策地域連携加算 1 と 2加算 1 は、医療安全対策に 3 年以上の経験か研修を修了した専任の医師を部門に置き、加算 1 と加算 2 の医療機関と連携して年 1 回程度相手に赴いて評価し、評価を受ける。
    加算 2 は加算 1 の医療機関から評価を受ける。
    50 点と 20 点。
    第 20 の 3、4
  • 患者サポート体制充実加算患者と家族の相談窓口に専任の医師、看護師、薬剤師、社会福祉士等を標榜時間内に常時 1 名以上。
    各部門に担当者、週 1 回程度のカンファレンス、対応と報告のマニュアル、相談の記録。
    医療対話推進者の研修の修了が望ましい(第 7 章)。
    第 21 の 2
  • 医療機器安全管理料 1常勤の臨床工学技士 1 名以上、医療安全管理部門、医療機器安全管理責任者、従業者への研修、保守点検。
    生命維持管理装置を用いた治療の管理を評価する。
    特掲 第 12 の 2

感染対策向上加算(1〜3)も、医療安全の隣にある体制です。
感染防止対策部門は医療安全管理部門と兼ねてよく、相互評価は地域連携加算の評価と併せて実施できます。
講座では位置づけだけを書き、届出率の図に入れています。

令和 8 年度の改定で変わったこと

医療安全対策加算 1専従の医療安全管理者研修通算 40 時間以上専従他の業務は月 16 時間まで週 1 回程度カンファレンス別表 2 の集積令和 8 年度から要件

中央社会保険医療協議会は 2026 年 2 月 13 日に答申し、改定は 6 月 1 日から適用されています。
個別改定項目は「患者への安心・安全な医療の提供を更に推進する観点から、医療安全対策加算の要件及び評価を見直す」と書いています(令和 8 年度診療報酬改定 個別改定項目(厚生労働省PDF)488 ページ)。

変わったのは 4 点です。
1 つ目は点数で、加算 1 が 85 点から 160 点、加算 2 が 30 点から 70 点になりました。
2 つ目は特定機能病院で、医療安全対策地域連携加算 1 を特定機能病院も算定できるようになりました(加算 2 は引き続き除く)。
3 つ目は専従の扱いで、加算 1 の医療安全管理者が業務に従事する時間が所定労働時間に満たない場合、月 16 時間までに限り他の業務に従事してよいことになりました。
4 つ目は重大事象で、加算 1 の施設基準に、別表 2 の事象を医療安全管理部門に集積して傾向を把握し、必要に応じて検証と記録と委員会への報告と対策を行う体制が加わりました(第 5 章)。

図 6-2 医療安全対策加算と地域連携加算の点数。令和 8 年度改定の前後
0 点30 点60 点90 点120 点150 点180 点医療安全対策加算 1専従の医療安全管理者160 点改定前 85 点医療安全対策加算 2専任の医療安全管理者70 点改定前 30 点医療安全対策地域連携加算 1特定機能病院も算定可能に50 点医療安全対策地域連携加算 2特定機能病院を除く20 点改定前改定後(2026 年 6 月 1 日〜)出典: 令和 8 年度診療報酬改定 個別改定項目 488 ページ。地域連携加算 1 は特定機能病院も算定可能に、加算 2 は特定機能病院を除く。

出典: 令和 8 年度診療報酬改定 個別改定項目 488 ページ(厚生労働省PDF)

施設基準には、医療事故調査制度との接点も入りました。
加算 1 の施設基準 (1) キは、「当該保険医療機関の管理者が、医療事故調査制度に係る適切な研修を修了していることが望ましい」とし、研修はセンター、協議会、支援団体が実施するものに限るとしています。
2029 年 4 月に義務になる研修(第 2 章)を、診療報酬が先に「望ましい」としている形です。

令和 8 年度の改定は、医療情報システムが止まったときへの備えも施設基準にしました。
医療情報取得加算と医療 DX 推進体制整備加算を廃止し、診療録管理体制加算にあったサイバーセキュリティの要件を見直して、電子的診療情報連携体制整備加算を新設しています。
加算 1 の施設基準は、専任の医療情報システム安全管理責任者の配置と職員への年 1 回程度の情報セキュリティ研修、オフラインを含む複数の方式で 3 世代以上のバックアップ、非常時を想定した BCP(業務継続計画)の策定と責任者の主導による年 1 回程度の訓練です(基本診療料の施設基準等 第 4 の 5(厚生労働省PDF))。
BCP には、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインの企画管理編「非常時(災害、サイバー攻撃、システム障害)対応と BCP 策定」の事項を含めることとされています。
医療安全管理者と医療情報システム安全管理責任者は別の役職ですが、止まったときに診療を続けるか制限するかは、第 7 章で見る管理者の「診療の継続の可否」の判断と同じです。
次の集計には、この加算 1 の届出率も載せました。

2 つの「医療安全管理者」

2026 年 4 月の省令改正で、「医療安全管理者」という言葉が医療法の制度に入りました。
診療報酬にはそれより前から同じ言葉があり、要件が違います。
報告書の補足資料は、各制度の医療安全に関わる者の要件を 1 枚の表にしています(医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会 報告書 補足資料(厚生労働省PDF)7 ページ)。

図 6-3 省令の医療安全管理者と、診療報酬の医療安全管理者。要件の違い
医療安全管理者(省令。施行規則 第 1 条の 11)医療安全管理者(診療報酬。施設基準 第 20)配置有床の病院等(2026 年 4 月 1 日〜)医療安全対策加算を届け出る病院要件十分な知識を有する常勤職員。資格は問わない看護師、薬剤師その他の医療有資格者研修業務指針に沿った研修が望ましい国または団体の 40 時間以上の研修が必要兼務病院では管理者と不可。他の役職とは可加算 1 は専従(月 16 時間まで例外)、加算 2 は専任業務委員会の支援、研修の実施、改善方策の業務企画立案と評価、巡回、推進担当者の支援、研修、相談窓口との連携加算を届け出ている病院は、診療報酬の医療安全管理者が省令の要件も満たす。届け出ていない病院は、省令の医療安全管理者を置けば足りる。出典: 検討会 報告書 補足資料 7 ページ、施行に伴う留意事項の通知 第 2、基本診療料の施設基準等 第 20。

出典: 医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会 報告書 補足資料 7 ページ、医療法施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う留意事項等について 第 2、基本診療料の施設基準等 第 20

  • 省令の医療安全管理者
    配置
    すべての病院、有床の診療所、入所施設のある助産所(2026 年 4 月 1 日から)
    要件
    医療安全に関する十分な知識を有する常勤職員。
    医療関連資格の有無は問わない(事務職等を含む)
    研修
    業務指針に沿った研修の受講が望ましい
    兼務
    病院では管理者との兼務は不可。
    医薬品安全管理責任者など他の役職との兼務は可
    施行規則 第 1 条の 11 第 1 項第 5 号
  • 診療報酬の医療安全管理者
    配置
    医療安全対策加算を届け出る保険医療機関
    要件
    看護師、薬剤師その他の医療有資格者。
    加算 2 は、研修を修了し部門で 1 年以上の経験のある専任の職員でもよい(別に有資格者を部門に置く)
    研修
    国または医療関係団体等が主催する通算 40 時間以上の研修の修了が必要
    兼務
    加算 1 は専従(月 16 時間までの例外)、加算 2 は専任
    基本診療料の施設基準等 第 20

加算を届け出ている病院は、診療報酬の医療安全管理者が省令の要件も満たすので、新たに置く必要はありません。
加算を届け出ていない病院は、資格を問わない省令の医療安全管理者を置けば足ります。
診療報酬の 40 時間の研修は、医療安全管理者の業務指針(令和 2 年改定)の「研修において習得すべき基本的事項」に沿ったもので、報告書によると令和 7 年 7 月の時点で少なくとも約半数の病院がこの研修を受けた者を配置しています。

全国の届出率(病院ドックの集計)

病院ドックは、各地方厚生局が公開している届出受理医療機関名簿を取り込み、病院ごとの施設基準の届出を表示しています。
その同じデータから、診断対象の病院(20 床以上の病院)のうち、医療安全にかかわる施設基準をそれぞれ届け出ている病院の数と割合を集計したのが次の図です。
基準日は名簿の公表日で、名簿が更新されると数字も変わります。

医療安全にかかわる施設基準を届け出ている病院の割合(全国の診断対象 7,948 院)
  1. 感染対策向上加算感染制御チームと研修、巡回。加算 1〜3 の合計。医療安全の隣にある体制 61.8%4,911 院
  2. 医療安全対策加算研修を受けた医療安全管理者と医療安全管理部門。加算 1 と 2 の合計 53.2%4,227 院
  3. 医療機器安全管理料常勤の臨床工学技士と医療機器安全管理責任者、保守点検。管理料 1 35.0%2,779 院
  4. 患者サポート体制充実加算患者と家族の相談窓口に専任の職員を常時配置 33.4%2,656 院
  5. 電子的診療情報連携体制整備加算1専任の医療情報システム安全管理責任者、オフラインのバックアップ、年 1 回の BCP 訓練。外来と入院の加算 1 のどちらか 22.1%1,760 院
  6. 医療安全対策加算1内数。専従の医療安全管理者(160 点) 24.7%1,966 院
  7. 医療安全対策加算2内数。専任の医療安全管理者(70 点) 28.5%2,268 院

届出の有無は体制の一面です。病院の規模や機能によって、届け出る必要のない基準や、要件を満たせない基準があります。医療安全対策加算の届出が無い病院にも、医療法が義務づける指針、委員会、研修、医療安全管理者はあります。自院の届出は施設基準のページで確かめられます。

出典: 地方厚生局の届出受理医療機関名簿(公表基準日 2026年9月1日 以降)から病院ドックが集計。有効な届出だけを数え、分母は診断対象(20 床以上)の全病院。医療安全対策地域連携加算は名簿に独立した届出が無いため数えていない。電子的診療情報連携体制整備加算 1 は、外来(初診料等)か入院(入院料)のどちらかの加算 1 を届け出ている病院。

読み方の注意が 3 つあります。
1 つ目は、分母が診断対象の病院全体であることです。
入院基本料の届出が無い病院や、精神病床や療養病床が中心の病院も分母に入っています。
2 つ目は、届出の有無が体制の一面にすぎないことです。
医療安全対策加算は専従または専任の有資格者と部門を要件にしているので、小さい病院では届け出なくても医療法の義務(指針、委員会、研修、医療安全管理者)は果たしています。
届け出ていないことが、その病院の医療安全が整っていないことを意味するのではありません。
3 つ目は、国の数字との突き合わせです。
報告書は、医療安全管理者の研修の受講は医療安全対策加算の施設基準の 1 つで、令和 7 年 7 月時点で少なくとも約半数の病院が研修を受けた者を配置していると書いています(報告書 6 ページ)。
病院ドックの集計の医療安全対策加算(1 と 2)の届出率と整合しています。

自院の届出を確かめる 2 つの場所施設基準ページ届出の一覧と届出日届出の様式様式 35、35 の 4、36相互評価の記録地域連携加算は年 1 回程度届出が無くても医療法の義務は別

自院の届出は、病院ドックの施設基準のページで確かめられます。
届出の一覧と届出日が載っています。
医療安全対策加算の届出があれば、第 5 章の別表 2 の集積(加算 1)と、週 1 回程度のカンファレンス、業務改善計画書、相談窓口の掲示が要件として付いてきます。

地域連携加算の相互評価は、年 1 回程度の記録が要ります。
評価の項目は、医療安全管理者と部門と委員会の活動状況、各部門の実施状況で、国立病院機構の「医療安全相互チェックシート」などを参考に連携先と決めます。
特定機能病院のピアレビューはこの連携に含めません。

自院で確かめること

  • 届け出ている医療安全対策加算の区分(専従か専任か)と、医療安全管理者の 40 時間以上の研修の修了を確かめているか。
  • 週 1 回程度のカンファレンスと、業務改善計画書と活動実績の記録があるか。
    加算 1 なら別表 2 を集積する体制があるか。
  • 地域連携加算を届け出ているなら、連携する医療機関との年 1 回程度の相互評価の記録があるか。
    電子的診療情報連携体制整備加算 1 を届け出ているなら、年 1 回程度の BCP の訓練の記録があるか。

医療安全の体制は、患者に見える形でも求められています。
第 7 章で、患者との対話と相談窓口、そして自院の指針の見直しを見ます。

この章の一次資料

  • 令和 8 年度診療報酬改定 個別改定項目について 第 647 回 中央社会保険医療協議会 総会 2026 年 2 月 13 日。
    86 ページ、488 ページ(厚生労働省PDF)
  • 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて 保医発 0305 第 7 号。
    第 20 医療安全対策加算、第 21 感染対策向上加算、第 21 の 2 患者サポート体制充実加算(厚生労働省PDF)
  • 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて 保医発 0305 第 8 号。
    第 12 の 2 医療機器安全管理料(厚生労働省PDF)
  • 令和 8 年度診療報酬改定について(厚生労働省)
  • 医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会 報告書 6 ページ、同 補足資料 7 ページ(厚生労働省PDF)
  • 地方厚生局の届出受理医療機関名簿(病院ドックが取込。
    基準日は名簿の公表日)

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