重大事象の早見 — 院内で把握すべき 24 の事象と、C 類型の例

2026 年 2 月 13 日の通知「病院等において把握すべき重大事象の類型化について」が示した別表 1(12 事象)と別表 2(12 事象)に、報告書の補足資料が挙げる C 類型の例を加えて並べました。
3 月 31 日の通知は、指針の「委員会に報告すべき事例の範囲」に別表 1 を含めること、別表 2 を含めるよう努めることとし、令和 8 年度の診療報酬改定は医療安全対策加算 1 の施設基準に別表 2 の集積を入れました。
各件の定義は原文のままで、重大性や基準を各病院で定めるものはその旨を書いています。講座が事象の重大性を判断するものではありません。

別表 1(A 類型) — 委員会に報告すべき事例に含めること

患者への影響度が大きく、確実に回避する手段が普及している 12 の事象。発生したら即時かつ確実に把握し、全例で検証と対策を行う。指針の報告すべき事例の範囲に含めること(医政発 0331 第 72 号)

  • 別表 1(A 類型)

    1 手術等の侵襲的手技における患者、部位、手技又は人工物の取り違え

    注※1 手術室以外で行われるものを含む。カテーテルや内視鏡を用いた検査・治療、中心静脈穿刺、その他の穿刺(末梢血管穿刺等の軽微なものを除く)を含む。

    発生したら直ちに委員会(または医療安全管理部門)と管理者に報告する。
    全例で検証し、患者確認の手順と是正措置を記録する。

  • 別表 1(A 類型)

    2 手術等の侵襲的手技における意図しない異物の体内遺残

    注※1 手術室以外で行われるものを含む。カテーテルや内視鏡を用いた検査・治療、中心静脈穿刺、その他の穿刺(末梢血管穿刺等の軽微なものを除く)を含む。

    発生したら直ちに報告し、全例で検証する。
    カウントと画像確認の手順を見直し、再発防止策を周知する。

  • 別表 1(A 類型)

    3 薬剤又は栄養剤等の投与経路間違い(経消化管/非経消化管投与の取り違え又は経静脈/髄腔内投与の取り違え)

    発生したら直ちに報告し、全例で検証する。
    接続部の誤接続防止と投与前の確認の手順を点検する。
    死亡に至れば第 2 章の判断のプロセスへ。

  • 別表 1(A 類型)

    4 ハイアラート薬の過剰投与(インスリンの予定量の 10 倍以上の投与、高濃度カリウム液の急速投与又は抗がん剤の過量投与)

    発生したら直ちに報告し、全例で検証する。
    ハイアラート薬の保管、調製、投与の手順と、ダブルチェックの運用を点検する。

  • 別表 1(A 類型)

    5 既知のアレルギー又は禁忌薬剤等の投与による死亡又は後遺障害

    注※2 アレルギー・禁忌情報を把握した上で、リスク・ベネフィットを医学的に判断して投与した場合を除く。

    死亡なら第 2 章の判断のプロセスで医療事故に該当するかを判断する。
    アレルギー情報の記録と電子カルテの警告の運用を点検する。

  • 別表 1(A 類型)

    6 意図しない不適合な血液又は血液製剤/成分の輸血又は臓器の移植

    発生したら直ちに報告し、全例で検証する。
    輸血前の照合の手順を点検する。

  • 別表 1(A 類型)

    7 放射線治療における照射線量の設定間違い、照射部位の間違い又は累積線量の誤認

    発生したら直ちに報告し、全例で検証する。
    治療計画の確認と線量管理の手順を点検する。
    診療用放射線の安全管理の責任者と共有する。

  • 別表 1(A 類型)

    8 栄養剤等の注入前に検出されなかった消化管チューブの気道への留置

    発生したら直ちに報告し、全例で検証する。
    挿入後の位置確認の手順を点検する。

  • 別表 1(A 類型)

    9 気管切開チューブの迷入による死亡又は後遺障害

    死亡なら第 2 章の判断のプロセスへ。
    気管切開後早期の管理と、逸脱時の対応の手順を点検する。

  • 別表 1(A 類型)

    10 医療用ガスの取り違え、酸素投与が指示されている患者への無投与による死亡又は後遺障害

    死亡なら第 2 章の判断のプロセスへ。
    配管とボンベの表示、投与開始の確認の手順を点検する。

  • 別表 1(A 類型)

    11 医療機器の誤使用又は故障による死亡又は後遺障害

    死亡なら第 2 章の判断のプロセスへ。
    医療機器安全管理責任者と共有し、研修と保守点検の記録を確かめる。
    医療情報システムの停止中に起きやすい事象で、紙と口頭の手順を BCP に書く。

  • 別表 1(A 類型)

    12 重大な検査結果の確認、伝達又はフォローアップの失敗による死亡又は後遺障害

    注※3 検査結果には検体検査・画像検査・生理学的検査・病理学的検査が含まれる。重大性の定義は各病院で設定する。

    各病院で定める重大性の定義(パニック値の項目と閾値)

    死亡なら第 2 章の判断のプロセスへ。
    パニック値の項目と閾値、報告と対応の手順が院内で決まっているかを点検する。
    検査システムや電子カルテの停止中は配信が止まるので、紙と口頭の手順を BCP に書く。

別表 2(B 類型) — 含めるよう努めること。加算 1 では集積が要件

患者への影響度が大きいが、回避可能性は必ずしも高くない 12 の事象。院内に集積して傾向を把握し、疑義があれば検証する。指針に含めるよう努めること。医療安全対策加算 1 は医療安全管理部門への集積を施設基準にした

C 類型の例 — 報告する事例を限定せず、報告し学習する文化を

患者への影響度が比較的小さい事象。報告する事例を限定的にとらえる姿勢は望ましくなく、報告し学習する文化を高め続けることが望ましい(報告書の補足資料)。回避可能性が高いものは手順の見直しと教育を

  • C 類型の例

    ハイリスク医療における合併症(侵襲的手技の重大合併症、化学療法による有害事象での重症化など)

    報告し学習する対象として集める。
    繰り返す場合は構造的な背景要因がある可能性があるので検証する。

  • C 類型の例

    医学的管理の問題(患者の状態の変化への対応など)

    報告し学習する対象として集める。
    繰り返す場合は検証する。

  • C 類型の例

    療養上の問題(転倒転落や身体拘束による重症化、自殺など)

    報告し学習する対象として集める。
    死亡や後遺障害に至ったものは別表 2 の ⑩〜⑫ として集積する。

  • C 類型の例

    回避可能性が高い、患者への影響が比較的小さい事象(手順の逸脱、確認の漏れなど)

    手順の見直しと職員教育で改善する。
    報告する事例を限定しない。

  • C 類型の例

    ヒヤリ・ハット(患者に実施される前に発見された事例、実施されたが影響の無かった事例)

    院内の報告と学習の仕組みで集める。
    医療事故情報収集等事業に参加していれば報告できる。

  • C 類型の例

    医療事故情報収集等事業が求める「事故の発生の予防及び再発の防止に資する事例」

    参加医療機関は原則 2 週間以内にウェブで報告する。
    医療安全情報と四半期の報告書で全国の事例を学ぶ。

事象の定義は通知の別表の原文です。各病院で明確な基準を設定するもの(大量出血、高線量被曝、重大な検査結果の重大性)は、病院が決めます。
死亡または死産に至った事象が医療事故調査制度の「医療事故」に当たるかは、第 2 章のプロセスで管理者が判断します。重大事象であることと医療事故であることは別です。
個別の事案への対応は事情で異なります。判断に迷うときは、都道府県の医療事故調査等支援団体か医療事故調査・支援センターへご相談ください。