病院の医療事故講座

事故が起きる前に、病院が整えておくこと

医療法はすべての病院に医療安全管理体制の確保を義務づけ、2015 年からの医療事故調査制度で死亡事例の報告と調査を求めています。
施行 10 年の初めての見直しで、2026 年 4 月から医療安全管理者の配置、判断のプロセスと記録、重大事象の範囲が省令と通知に入りました。
法と仕組み、判断、相談先、数字、重大事象、診療報酬、患者との対話の順に 7 章で解説します。

解説の元は、医療法と医療法施行規則の条文、厚生労働省の通知と検討会の報告書、医療事故調査・支援センターと日本医療機能評価機構の 2025 年の年報、医療安全支援センターの相談件数、令和 8 年度診療報酬改定の資料です(2026 年 10 月 11 日に確認)。
年報、通知、診療報酬の改定、2029 年 4 月の研修の義務の施行に合わせて更新します。
講座は「国の資料にこう書いてある」までを伝えるもので、個別の事案への法的な助言はしません。

この講座の要点

医療法施行規則が病院に求める医療安全管理体制。4 本柱と、2026 年 4 月に加わった 2 つ。
医療の安全を確保するための措置(医療法 第 6 条の 12。すべての病院等の管理者の義務)1 指針8 項目を文書化委員会で策定と変更従業者に周知2 委員会月 1 回程度原因の分析と改善方策管理者へ報告3 研修年 2 回程度事例を取り上げ職種横断記録を残す4 改善方策事故報告等を収集し分析改善策を立案し実施実施状況を見直す5 医療安全管理者(2026 年 4 月〜)常勤職員。資格は問わない。有床の病院等に配置委員会の支援、研修の実施、改善方策の業務6 記録の整備(2026 年 4 月〜)医療事故の判断の結果、理由、遺族への対応研修の実施内容、委員会の議事録第 2 項の措置院内感染対策、医薬品安全管理責任者、医療機器安全管理責任者、診療用放射線の責任者、高難度新規医療技術(努力義務)出典: 医療法施行規則 第 1 条の 11、病院等における医療の安全を確保するための措置について(2026 年 3 月 31 日)。

医療法施行規則 第 1 条の 11 と、2026 年 3 月 31 日の通知「病院等における医療の安全を確保するための措置について」を元に(第 1 章、第 7 章)

  • 医療法はすべての病院に医療安全管理体制の確保を義務づけ、2015 年からの医療事故調査制度で死亡事例の報告と調査を求めています。施行 10 年の初めての見直しで、2026 年 4 月から医療安全管理者の配置、判断のプロセスと記録、重大事象の範囲が省令と通知に入りました。
  • 医療事故の発生報告は年 300〜400 件で、病院の 8 割に報告実績がありません。迷ったときの相談先(医療事故調査・支援センターのセンター合議、都道府県の支援団体)と、国の資料の数字で自院の立ち位置を確かめられます。
  • 病院ドックは厚生局の届出データから、医療安全にかかわる施設基準の全国の届出率を集計しています。自院の届出は施設基準ページで確かめられます。届出の有無は体制の一面で、優劣ではありません。

数字で見る

医療事故の発生報告は年 300〜400 件。2025 年は 375 件、累計 3,633 件
010020030040050081201510〜12 月4062016370201737720183732019324202031720213002022361202334920243752025医療事故発生報告件数(年別。件)2015 年は制度開始の 10〜12 月。累計 3,633 件(2015 年 10 月〜2025 年 12 月)。出典: 医療事故調査・支援センター 2025 年 年報 数値版。

医療事故調査制度の「医療事故」(提供した医療に起因し、または起因すると疑われる、予期しなかった死亡または死産)として、医療機関の管理者がセンターに報告した件数。3,451 件(95%)が病院からの報告です。

出典: 一般社団法人 日本医療安全調査機構「医療事故調査・支援センター 2025 年 年報」(2026 年 3 月。2026 年 10 月 11 日取得)

医療安全にかかわる施設基準を届け出ている病院の割合(全国の診断対象 7,948 院)
  1. 感染対策向上加算感染制御チームと研修、巡回。加算 1〜3 の合計。医療安全の隣にある体制 61.8%4,911 院
  2. 医療安全対策加算研修を受けた医療安全管理者と医療安全管理部門。加算 1 と 2 の合計 53.2%4,227 院
  3. 医療機器安全管理料常勤の臨床工学技士と医療機器安全管理責任者、保守点検。管理料 1 35.0%2,779 院
  4. 患者サポート体制充実加算患者と家族の相談窓口に専任の職員を常時配置 33.4%2,656 院
  5. 電子的診療情報連携体制整備加算1専任の医療情報システム安全管理責任者、オフラインのバックアップ、年 1 回の BCP 訓練。外来と入院の加算 1 のどちらか 22.1%1,760 院
  6. 医療安全対策加算1内数。専従の医療安全管理者(160 点) 24.7%1,966 院
  7. 医療安全対策加算2内数。専任の医療安全管理者(70 点) 28.5%2,268 院

届出の有無は体制の一面です。病院の規模や機能によって、届け出る必要のない基準や、要件を満たせない基準があります。医療安全対策加算の届出が無い病院にも、医療法が義務づける指針、委員会、研修、医療安全管理者はあります。自院の届出は施設基準のページで確かめられます。

出典: 地方厚生局の届出受理医療機関名簿(公表基準日 2026年9月1日 以降)から病院ドックが集計。有効な届出だけを数え、分母は診断対象(20 床以上)の全病院。医療安全対策地域連携加算は名簿に独立した届出が無いため数えていない。電子的診療情報連携体制整備加算 1 は、外来(初診料等)か入院(入院料)のどちらかの加算 1 を届け出ている病院。

左はセンターの年報(医療機関からの発生報告の件数)、右は病院ドックが厚生局の名簿から集計した全国の届出率です。報告の件数も届出の有無も病院の優劣ではありません。病院ごとの届出は施設基準のページで確かめられます。

章の一覧

  1. 第1章 医療安全は、すべての病院の義務です 医療法第 6 条の 12 と施行規則第 1 条の 11、2002 年からの経緯、指針と委員会と研修と改善方策の 4 本柱、2026 年 4 月に加わった医療安全管理者と記録、並ぶもう 1 つの義務であるサイバーセキュリティの確保。
  2. 第2章 「医療事故」を判断し、報告する 医療法の「医療事故」の定義、全死亡事例からの抽出、判断のプロセスと記録、遺族からの申出への再判断、2029 年からの研修。
  3. 第3章 医療事故調査・支援センターと支援団体という相談先 センターの 7 つの業務、センター合議、センター調査、遺族からの伝達、再発防止の提言、支援団体と都道府県の協議会、10 年の検証。
  4. 第4章 医療事故調査制度の 10 年を数字で読む 年 300〜400 件の報告、病院の 8 割に報告実績が無いこと、病床規模による差、起因した医療、院内調査、センター調査の 876 日。
  5. 第5章 院内で把握すべき重大事象と、報告して学ぶ仕組み 影響度と回避可能性の 2 軸、別表 1 と別表 2 の 24 事象、責任を追及しない分析、医療事故情報収集等事業の 6,118 件と医療安全情報。
  6. 第6章 診療報酬が評価する医療安全の体制 医療安全対策加算(160 点と 70 点)、地域連携加算、患者サポート体制充実加算、2 つの「医療安全管理者」、全国の届出率。
  7. 第7章 患者との対話、相談窓口、そして自院の体制を点検する 指針の閲覧と相談窓口、医療対話推進者、都道府県の医療安全支援センター、医療安全推進週間、2026 年 4 月の通知で指針を見直す。

道具

医療法と医療法施行規則の条文、厚生労働省の通知と検討会の報告書、医療事故調査・支援センター(一般社団法人 日本医療安全調査機構)と公益財団法人 日本医療機能評価機構の年報、医療安全支援センター総合支援事業の集計、診療報酬改定の資料をもとに、病院ドック編集部がまとめました。
国や 2 つの機構が監修したものではありません。
個別の事案への対応は事情で異なります。判断に迷うときは、都道府県の医療事故調査等支援団体か医療事故調査・支援センターへご相談ください。
内容の誤りは訂正受付窓口からお知らせください。