第3章 都道府県の役割

執筆者/監修

病院ドック編集部

病院ドック運営(株式会社ウェブリク)

病院ドックを運営する株式会社ウェブリクの編集部が、病院の運営にかかわる制度と行政の仕組みを、公的資料をもとに要点をしぼって解説します。

一般の方の目線で医療を分かりやすく伝えることを目指しています。

病院にとって、都道府県はいちばん多くの手続きの相手です。
この章では、開設と病床の許可、医療計画と基準病床数、地域医療構想、立入検査、基金の順に、都道府県が何をしているかを見ます。

病院の開設と病床の許可

医療法 第 7 条、第 27 条開設と病床は知事の許可病院の開設都道府県知事の許可病床の数と種別を変えるこれも許可が要る基準に合っていれば知事は許可を与える使い始める前に知事の検査と許可証指定都市市長が許可(知事に協議)

病院を開くときは、開設地の都道府県知事の許可を受けなければなりません(医療法 第 7 条 第 1 項(e-Gov 法令))。
病床の数や種別(精神、感染症、結核、療養、一般)を変えるときも、許可が要ります(同 第 2 項)。
構造設備と人員が基準に合っているときは、知事は「許可を与えなければならない」と定められています(同 第 4 項)。
許可のあとも、構造設備は知事の検査を受けて許可証を受け取るまで使えません(医療法 第 27 条)。

指定都市では、病院の開設の許可は市長が行います。
このとき市長は、あらかじめ都道府県知事に協議し、同意を求めなければなりません(地方自治法施行令 第 174 条の 35(e-Gov 法令))。
中核市などの保健所を設置する市の市長と特別区の区長が許可するのは、診療所と助産所です。

権限の委譲や事務の分担は自治体で異なります。
自院の所管は、都道府県のサイトでお確かめください。

医療計画は 6 年ごと

都道府県は、国の基本方針に即して、地域の実情に応じた医療計画を作ります(医療法 第 30 条の 4)。
今の計画は第 8 次で、2024 年度(令和 6 年度)から始まりました。
6 年ごとに調査、分析、評価をして、必要なら計画を変えます。
在宅医療、かかりつけ医機能、医師の確保、外来医療の部分は 3 年ごとです(同 第 30 条の 6)。
2027 年度(令和 9 年度)から始まる第 8 次の後期の計画は、2026 年度に作られます。

  • 5 疾病がん、脳卒中、心筋梗塞などの心血管疾患、糖尿病、精神疾患
  • 6 事業と在宅医療救急医療、災害時の医療、新興感染症の発生とまん延の時の医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療。
    そして在宅医療
  • 医療圏二次医療圏と三次医療圏
  • 基準病床数療養病床と一般病床は二次医療圏ごと、精神病床、結核病床、感染症病床は都道府県ごと
  • 地域医療構想2027 年 4 月からは医療計画から独立した構想に(第 6 章)
  • 外来医療と医師の確保外来医療計画と医師確保計画。
    どちらも医療計画の一部

「5 疾病 6 事業」は国の通知の言い方。
出典: 医療計画について 令和 5 年 3 月 31 日 医政発 0331 第 16 号(令和 8 年 9 月 18 日改正)(厚生労働省PDF)、医療法 第 30 条の 4 第 2 項

医療計画と医療圏の言葉の説明は、コラム「医療計画と地域医療構想と医療圏」にまとめています。

二次医療圏と基準病床数

医療計画の単位医療圏と基準病床数二次医療圏入院の医療を一体で確保三次医療圏概ね都道府県の区域療養病床と一般病床二次医療圏ごとに基準精神、結核、感染症都道府県ごとに基準基準病床数の式全国で同じ

医療計画の単位になるのが、二次医療圏です。
国の指針は、地理や交通、日常の生活の需要を考えて、病院の入院の医療を「一体の区域として」確保するのが相当な区域、と定めています。
三次医療圏は、概ね都道府県の区域です。

都道府県は、療養病床と一般病床の基準病床数を二次医療圏ごとに、精神病床、結核病床、感染症病床の基準病床数を都道府県の区域ごとに定めます。
基準病床数の式は全国で同じです。
国の通知は、その理由を「全都道府県において統一的に実施しなければ実効を期しがたい」と書いています。

基準病床数を超える地域では、許可と勧告と指定がつながる

基準病床数を超える地域で病院を開くときや病床を増やすときは、開設者によって扱いが違います。

図 3-1 基準病床数を超える地域での、許可と勧告と指定の流れ。公的医療機関などは不許可、それ以外の病院には勧告
公的医療機関などそれ以外の病院開設や増床の申請都道府県知事へ医療審議会の意見都道府県医療審議会許可しないことができる医療法 第 7 条の 2開設や増床の申請都道府県知事へ許可要件に合えば許可しなければならない知事の勧告医療法 第 30 条の 11(医療審議会の意見)指定で病床を除くことも勧告に従わないとき健康保険法 第 65 条 4 項許可は都道府県(医療法)、指定は国(健康保険法)。基準病床数を超える地域では、この 3 つの条でつながる

公的医療機関などは、医療法 第 7 条の 2 第 1 項の者(第 31 条の公的医療機関、共済組合、健康保険組合、国民健康保険組合と国民健康保険団体連合会、地域医療機能推進機構など)。
出典: 医療法 第 7 条の 2、第 30 条の 11(e-Gov 法令)、健康保険法 第 65 条 第 4 項(e-Gov 法令)

国の指針は、基準病床数を超える場合を「法第 30 条の 11 の規定に基づく都道府県知事の勧告(公的医療機関等が開設等する病院等については法第 7 条の 2 第 1 項の規定に基づく不許可処分)の対象となり得る」と書いています。
都道府県の許可と、国の保険医療機関の指定は、別の手続きですが、この場面では条文でつながっています。

地域医療構想と調整会議

都道府県が作る地域医療構想見すえるもの将来の医療の需要進めること機能の分化と連携協議の場地域医療構想調整会議病院がすること病床の機能を毎年報告

地域医療構想は、将来の医療の需要を見すえて、病院の機能の分化と連携を進めるための構想です。
都道府県が、構想区域(二次医療圏が原則)ごとに作ります。
厚生労働省は、次のように説明しています。

地域医療構想の推進の取組は、病床の削減や統廃合ありきではなく、各都道府県が、地域の実情を踏まえ、主体的に取組を進めるものです。

2025 年に向けた地域医療構想(厚生労働省)

都道府県は、構想区域ごとに地域医療構想調整会議を設け、医療機関どうしの協議で機能の分化と連携を進めます(医療法 第 30 条の 14)。
国のガイドラインは、参加者を「医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会、病院団体、医療保険者、市町村など幅広いものとすることが望ましい」としています(地域医療構想策定ガイドライン(厚生労働省PDF))。

病院は毎年、病棟ごとの病床の機能を都道府県に報告します(第 5 章)。
病床の機能は、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の 4 つでしたが、2026 年度の報告から「回復期」は「包括期」になりました(第 6 章)。
都道府県には、病床の機能を変えようとする病院に対して、公的医療機関などには命令や指示を、それ以外の病院には要請や勧告をする権限があります(医療法 第 30 条の 15〜第 30 条の 17)。

2027 年 4 月からは、地域医療構想は 2040 年ごろを見すえた新しい構想に変わります(第 6 章)。

医師の確保と、地域医療介護総合確保基金

都道府県の役割医師の確保と基金医師確保計画3 年ごとに作る協議の場地域医療対策協議会¥地域医療介護総合確保基金国 3 分の 2、都道府県 3 分の 1基金の募集と窓口都道府県ごとに違う

都道府県は、医療計画の一部として医師確保計画を 3 年ごとに作ります。
国のガイドラインは「2036 年までに医師偏在是正を達成することを長期的な目標」としています(医師確保計画策定ガイドライン〜第 8 次(後期)〜(厚生労働省PDF))。
医師の確保は、都道府県の地域医療対策協議会で協議します(医療法 第 30 条の 23)。

地域医療介護総合確保基金は、2014 年度(平成 26 年度)に、消費税の増収分などを使って各都道府県に設けられた基金です。
国が 3 分の 2、都道府県が 3 分の 1 を負担します。
2026 年度(令和 8 年度)の予算は、公費で 1,390 億円(うち医療の分 960 億円)です。
医療の分の事業は、施設と設備の整備、病床の機能と数の変更、在宅医療、医療従事者の確保、勤務医の労働時間の短縮に分かれています(地域医療介護総合確保基金の概要(厚生労働省PDF))。
病院が基金の補助を受けるときの募集と窓口は、都道府県ごとに違います。

立入検査は、原則年 1 回

医療法 第 25 条 第 1 項立入検査検査する人自治体の医療監視員頻度(国の要綱)原則として年 1 回検査の項目人員、管理、記録、構造設備不適合や指導の事項文書で伝え、改善計画書

都道府県知事、保健所を設置する市の市長、特別区の区長は、病院に立ち入り、人員、清潔の状態、構造設備、診療録などを検査させることができます(医療法 第 25 条 第 1 項)。
国の要綱は、目的を次のように書いています。

病院が医療法及び関連法令により規定された人員及び構造設備を有し、かつ、適正な管理を行っているか否かについて検査することにより、病院を科学的で、かつ、適正な医療を行う場にふさわしいものとすることを目的とする。

医療法第 25 条第 1 項の規定に基づく立入検査要綱 令和 8 年 6 月版(厚生労働省PDF)

要綱は、すべての病院を対象に原則年 1 回としていて、自治体が任命した医療監視員が病院に出向きます。
実際の頻度と進め方は、自治体によります。
検査の項目は、医療従事者、管理、帳票と記録、業務の委託、防火と防災の体制、放射線の管理、構造設備です。
不適合や指導の事項は文書で伝えられ、期限を決めて改善計画書を出します。

2023 年度(令和 5 年度)は、病院 8,138 のうち 7,587 に立入検査が行われました(93.2%)。
項目の遵守率は全体で 98.3% で、適合率が最も低かった項目は「サイバーセキュリティの確保」(91.1%)でした(医療法第 25 条に基づく病院に対する立入検査結果(令和 5 年度)(厚生労働省PDF))。
立入検査で確かめられるサイバーセキュリティの項目は、病院のサイバーセキュリティ講座で解説しています。

国民健康保険の財政運営

2018 年度から国民健康保険は 2 者で都道府県財政運営の中心市町村資格と保険料の窓口¥お金の流れ医療費の見える化講座で

2018 年度(平成 30 年度)から、都道府県も市町村とともに国民健康保険を行っています(国民健康保険法 第 3 条(e-Gov 法令))。
都道府県は財政運営の中心的な役割を担い、資格や保険料の窓口は引き続き市町村です(同 第 4 条)。
国民健康保険のお金の流れは、医療費の見える化講座で扱っています。

自院で確かめること

  • 自院のある二次医療圏と構想区域の名前と、医療計画の中で自院の圏域の既存病床数と基準病床数がどう書かれているか。
  • 自院の構想区域の地域医療構想調整会議に、だれが出ているか、議事の資料をどこで見られるか。
  • 前回の立入検査で指摘された事項と、出した改善計画書の控え。

この章の一次資料

  • 医療法 第 7 条、第 7 条の 2、第 25 条、第 27 条、第 30 条の 4、第 30 条の 6、第 30 条の 11、第 30 条の 14〜第 30 条の 17、第 30 条の 23(e-Gov 法令)
  • 地方自治法施行令 第 174 条の 35(e-Gov 法令)、健康保険法 第 65 条(e-Gov 法令)、国民健康保険法 第 3 条、第 4 条(e-Gov 法令)
  • 医療計画について 令和 5 年 3 月 31 日 医政発 0331 第 16 号(令和 8 年 9 月 18 日改正)(厚生労働省PDF)、医療計画(厚生労働省)
  • 2025 年に向けた地域医療構想(厚生労働省)、地域医療構想策定ガイドライン 平成 29 年(厚生労働省PDF)
  • 医師確保計画策定ガイドライン〜第 8 次(後期)〜 2026 年 6 月 30 日(厚生労働省PDF)
  • 地域医療介護総合確保基金の概要(令和 8 年度予算版)(厚生労働省PDF)
  • 医療法第 25 条第 1 項の規定に基づく立入検査要綱 令和 8 年 6 月版(厚生労働省PDF)、医療法第 25 条に基づく病院に対する立入検査結果(令和 5 年度)(厚生労働省PDF)

制度や数値は掲載時点の情報です。最新の内容は所管の原文でご確認ください。 権限の委譲や受付の窓口は自治体で異なります。自院の所管は、都道府県と地方厚生局のサイトでお確かめください。 内容の誤りは訂正受付窓口からお知らせください。