第6章 2040 年に向けて、役割はどう変わるか
2025 年 12 月 12 日に、医療法等の一部を改正する法律(令和 7 年法律第 87 号)が公布されました。
2028 年にかけて順に施行され、病院と行政の役割分担も変わります。
この章では、決まったことと、これから決まることを分けて見ます。
改正の趣旨
改正法の概要は、趣旨を次のように書いています。
高齢化に伴う医療ニーズの変化や人口減少を見据え、地域での良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を構築するため、地域医療構想の見直し等、医師偏在是正に向けた総合的な対策の実施、これらの基盤となる医療DXの推進のために必要な措置を講ずる。
医療法等の一部を改正する法律(令和 7 年法律第 87 号)の概要(厚生労働省PDF)
柱は、地域医療構想の見直し、医師の偏在の対策、医療 DX の 3 つです。
地域医療構想は、病床から医療の全体へ
2027 年 4 月から、地域医療構想は医療計画の記載事項の 1 つから、独立した条(医療法 第 30 条の 3 の 3)になります。
改正法の概要は「病床のみならず、入院・外来・在宅医療、介護との連携を含む将来の医療提供体制全体の構想とする」と書いています。
| 2025 年に向けた構想 | 2040 年に向けた構想 | |
|---|---|---|
| 位置づけ | 医療計画の記載事項の 1 つ | 独立した構想(2027 年 4 月から) |
| 範囲 | 病床の機能の分化と連携 | 入院、外来、在宅医療、介護との連携、人材の確保を含む医療提供体制の全体 |
| 病院が報告するもの | 病床の機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期) | 医療機関機能(5 つ)と、病床の機能(高度急性期、急性期、包括期、慢性期) |
| 協議の場 | 医療関係者、医療保険者など | 市町村、介護サービス事業者、地域住民の代表者が加わる |
| 目標の年 | 2025 年 | 2040 年ごろ |
出典: 医療法(2027 年 4 月 1 日施行版)(e-Gov 法令)、地域医療構想策定ガイドライン 令和 8 年 7 月 3 日(厚生労働省PDF)、省令の公布について(地域医療構想関係)令和 8 年 7 月 31 日(厚生労働省PDF)
国のガイドライン(2026 年 7 月)は、「地域医療構想は 2028 年度までに策定すること」としています。
2026 年度から 2027 年度の上半期ごろまでに、データにもとづいて医療の需要と提供の体制を分析し、2028 年度までに調整会議で協議して構想を作る、という段取りです。
その先は、2029 年度ごろに第 9 次医療計画を作り、2035 年ごろに成果を確かめる予定です。
都道府県は引き続き構想を作って進める主体です。
国のガイドラインは、医療を担当する部署が無い市町村もあるので、都道府県が市町村の職員の研修などで支えることを求めています。
今の取り組みは、2040 年に向けた地域医療構想(厚生労働省)にまとまっています。
病院は「医療機関機能」を報告する
2026 年 10 月 1 日から、病床機能報告は「医療機関機能・病床機能報告」になりました(医療法 第 30 条の 13)。
病院は、病棟ごとの病床の機能に加えて、病院として担う医療機関機能を報告します。
- 高齢者救急・地域急性期機能高齢者をはじめとした救急搬送を受け入れ、入院早期からのリハビリテーションや退院の調整を行い、早期の退院につなげ、退院後のリハビリテーションなどの提供を確保します。
- 急性期拠点機能手術や救急医療など医療資源を多く要する症例を集約して医療を提供します。
人口の少ない地域では 1 つ、地方都市型や大都市型の地域では人口 20 万人から 30 万人に 1 つを確保することが基本的な考え方です。 - 在宅医療等連携機能地域での在宅医療の実施、他の医療機関や介護施設、訪問看護、訪問介護などと連携した 24 時間の対応や入院の対応を行います。
- 専門等機能上の 3 つにあてはまらないが、集中的なリハビリテーション、中長期の入院医療、有床診療所が担う地域に根ざした診療、一部の診療科に特化した診療などを行います。
- 医育及び広域診療機能大学病院の本院が担います。
順番と名前は原文。
定義は原文の要約。
出典: 地域医療構想策定ガイドライン 令和 8 年 7 月 3 日 p.17〜19(厚生労働省PDF)
ガイドラインは、高齢者救急・地域急性期機能と急性期拠点機能を 1 つの病院が両方とも報告することはしない、としています。
また、「特定の診療報酬項目の届出の有無を各医療機関機能の必要条件や十分条件のように取り扱うことは適切ではなく」と書いています。
各病院は、遅くとも 2028 年度までに、2040 年に担う医療機関機能を決めて報告します。
病床の機能では、これまでの「回復期」が「包括期」になりました。
ガイドラインは、高齢者などの急性期の患者に治療と入院早期からのリハビリテーションなどを行い、早期の在宅復帰を目的とした「治し支える医療」を提供する機能と、従来の回復期機能を併せて、包括期機能と位置づけています。
報告で選ぶ将来の時点は、2040 年です(医療機関機能・病床機能報告(厚生労働省))。
2027 年 10 月からは、精神病床を持つ病院も報告の対象に加わります。
調整会議に、市町村と介護と住民が加わる
2027 年 4 月から、地域医療構想調整会議の関係者として、市町村が法律に明記されます(医療法 第 30 条の 14)。
省令で定める参加者には、介護サービス事業者と地域住民の代表者も入ります。
調整会議は、都道府県の単位と、構想区域の単位の両方に置かれます。
市町村の立場は、第 4 章で見たとおり、病院の開設者、介護保険の主体、住民にいちばん近い行政です。
ガイドラインは、市町村が介護の課題を調整会議で共有し、医療側の課題も把握して、医療と介護の連携を進めることを求めています。
医師の偏在の対策
改正法は、医師の偏在の対策も定めています。
病院にかかわるものと、主に診療所にかかわるものがあります。
- 保険医療機関の管理者の要件2026 年 4 月から。
保険医であること、臨床研修のあと病院で保険医として 3 年以上診療した経験など。
2026 年 4 月 1 日の時点の管理者は、同じ保険医療機関の管理者である限り 3 年間は引き続き管理者でいられます。健康保険法 第 70 条の 2 - 重点的に医師の確保を図る区域2026 年 4 月から。
都道府県が医療計画で定めることができます。
国の対策パッケージでは「重点医師偏在対策支援区域」と呼んでいます。医療法、医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ - 医師の少ない区域での勤務の経験2026 年 4 月から、この経験を管理者の要件とする病院に、公的医療機関と、国立病院機構、地域医療機能推進機構、労働者健康安全機構が開く病院が加わりました。令和 8 年厚生労働省令第 28 号
- 外来医師過多区域2026 年 4 月から。
都道府県が指定した区域で無床の診療所を開こうとする人は、開く日の 6 か月前までに届け出ます。
要請や勧告に従わない診療所は、保険医療機関の指定の期間が 3 年以内に短くなります。
厚生労働省は、候補として 9 つの二次医療圏を公表しました。医療法 第 30 条の 18 の 6、健康保険法 第 68 条の 2
出典: 医療法等の一部を改正する法律の概要(厚生労働省PDF)、医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ(厚生労働省PDF)、省令の公布について 令和 8 年 3 月 19 日(九州厚生局PDF)、外来医師過多区域に係る候補区域の公表について(厚生労働省PDF)、保険医療機関の管理者の要件・責務について(厚生労働省)
外来医師過多区域は、主に診療所にかかわる仕組みです。
病院にとっては、管理者の要件と、都道府県の医師の確保の計画が直接かかわります。
支払基金は、DX審査支払機構に
医療 DX の柱の 1 つとして、社会保険診療報酬支払基金は、2026 年 10 月 1 日に「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構」(略して DX審査支払機構)になりました(医療情報基盤・診療報酬審査支払機構の発足(DX審査支払機構))。
レセプトの審査と支払いに加えて、医療 DX を進める中心の役割を担います。
衆議院での修正で、2030 年の末までに電子カルテの普及率を約 100% にすることも、改正法に盛り込まれました。
施行の時期
決まっているものと予定を、4 つの印で分けました。
施行済み法律で決まっているガイドラインの予定日が決まっていない
- 2025 年 12 月 12 日改正法の公布
- 2026 年 4 月 1 日保険医療機関の管理者の要件、外来医師過多区域、重点的に医師の確保を図る区域、オンライン診療の規定
- 2026 年 7 月 3 日新しい地域医療構想策定ガイドライン
- 2026 年 10 月 1 日医療機関機能・病床機能報告(回復期を包括期に)、DX審査支払機構の発足
- 2026 年度〜2027 年度上半期ごろデータにもとづく分析と課題の整理
- 2027 年 4 月 1 日地域医療構想が独立した構想に、調整会議の関係者に市町村。
第 8 次(後期)の医師確保計画と外来医療計画の開始 - 2027 年 10 月 1 日精神病床を持つ病院も医療機関機能・病床機能報告の対象に
- 2027 年 12 月まで美容医療を行う医療機関の報告
- 2028 年 4 月 1 日精神病床も必要病床数などの対象に
- 2028 年度まで地域医療構想の策定、各病院が 2040 年に担う医療機関機能の決定と報告
- 2028 年 12 月まで医師の手当の事業
- 2029 年度ごろ第 9 次医療計画の策定
- 2030 年末電子カルテの普及率 約 100% の目標
- 2035 年ごろ成果の確保
2026 年 10 月 4 日現在。
出典: 医療法の附則(e-Gov 法令)、「医療法等の一部を改正する法律」の公布及び一部施行について(通知)(厚生労働省PDF)、地域医療構想策定ガイドライン(厚生労働省PDF)
日が決まっていないものや、議論が続いているものは、決まったら更新します。
審議会と検討会の今の議論は、「厚生労働省の政策の動き」で見られます。
自院で確かめること
- 医療機関機能・病床機能報告で、自院が選ぶ医療機関機能と、病棟ごとの病床の機能(とくに回復期から包括期への読み替え)を、院内のだれが決めるか。
- 自院の構想区域で、2026 年度から 2027 年度にかけてのデータの分析と協議の予定が、都道府県からどう案内されているか。
- 保険医療機関の管理者の要件と、2026 年 4 月 1 日時点の管理者に認められた 3 年の経過措置。
次の管理者が要件を満たすか。
この章の一次資料
- 医療法 第 30 条の 3 の 3、第 30 条の 13、第 30 条の 14、第 30 条の 18 の 6、附則(施行日ごとの版)(e-Gov 法令)
- 健康保険法 第 68 条の 2、第 70 条の 2(e-Gov 法令)
- 医療法等の一部を改正する法律(令和 7 年法律第 87 号)の概要(厚生労働省PDF)
- 「医療法等の一部を改正する法律」の公布及び一部施行について(通知)令和 7 年 12 月 12 日(厚生労働省PDF)
- 2040 年に向けた地域医療構想(厚生労働省)、地域医療構想策定ガイドライン 令和 8 年 7 月 3 日(厚生労働省PDF)
- 省令の公布について(地域医療構想関係)令和 8 年 7 月 31 日(厚生労働省PDF)
- 医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ 令和 6 年 12 月 25 日(厚生労働省PDF)
- 省令の公布について(外来医師過多区域、管理者の要件、指定の期間)令和 8 年 3 月 19 日(九州厚生局PDF)、外来医師過多区域に係る候補区域の公表について(厚生労働省PDF)
- 保険医療機関の管理者の要件・責務について(厚生労働省)
- 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構の発足 2026 年 10 月 1 日(DX審査支払機構)
制度や数値は掲載時点の情報です。最新の内容は所管の原文でご確認ください。 権限の委譲や受付の窓口は自治体で異なります。自院の所管は、都道府県と地方厚生局のサイトでお確かめください。 内容の誤りは訂正受付窓口からお知らせください。