第4章 保健所と市町村の役割

執筆者/監修

病院ドック編集部

病院ドック運営(株式会社ウェブリク)

病院ドックを運営する株式会社ウェブリクの編集部が、病院の運営にかかわる制度と行政の仕組みを、公的資料をもとに要点をしぼって解説します。

一般の方の目線で医療を分かりやすく伝えることを目指しています。

病院に身近な行政の窓口が保健所です。
一方、市町村は、病院に対して許可や指定をする立場ではありませんが、地域の医療と介護に大きな役割を持っています。
この章では、保健所が病院にすることと、市町村の 5 つの顔を見ます。

保健所は全国に 462

保健所は、地域保健法にもとづいて、都道府県、指定都市、中核市などの市、特別区が設けています(地域保健法 第 5 条(e-Gov 法令))。

図 4-1 保健所の設置主体と数。本所は 462、うち 352 は都道府県
都道府県352(支所 61)47 団体指定都市20(支所 62)20 団体中核市6262 団体その他の政令で定める市55 団体特別区2323 団体本所の合計 462。青は都道府県、緑は市と特別区

2026 年 4 月 1 日現在。
その他の政令で定める市は小樽市、町田市、藤沢市、茅ヶ崎市、四日市市。
島根県と松江市が共同で設けた松江市保健所は、両方に 1 つずつ数えている。
出典: 設置主体別保健所数(令和 8 年 4 月 1 日現在)(厚生労働省PDF)

自院の所在地が、都道府県の保健所の管内か、市や区の保健所の管内かで、立入検査をする自治体が変わります。
医療法は立入検査の主体を「都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長」としています(第 3 章)。

保健所が病院にすること

国の指針は、保健所の仕事に「医事、薬事等における監視及び指導」と「医療機関間の連携に係る調整」を挙げ、保健所を「地域における健康危機管理の拠点」としています(地域保健対策の推進に関する基本的な指針(厚生労働省PDF))。
病院から見ると、保健所とは次の場面で関わります。

  • 立入検査医療監視員が病院に出向きます(第 3 章)。医療法 第 25 条
  • 感染症の届出医師は、感染症の患者などを診断したとき、最寄りの保健所長を経由して都道府県知事(保健所を設置する市などでは市長など)に届け出ます。感染症法 第 12 条
  • 食中毒の届出医師は、食中毒の患者などを診断したとき、直ちに最寄りの保健所長に届け出ます。食品衛生法 第 63 条
  • 院内感染の報告と相談1 つの事例で発病した人が多い場合(目安は 10 名以上)や、関係が否定できない死亡があった場合は、管轄の保健所に速やかに報告します。
    それより前でも、必要に応じて報告や相談をすることが望ましいとされています。
    平成 26 年 12 月 19 日 医政地発 1219 第 1 号
  • 病院報告病院の管理者は、毎月 10 日までに病院報告を保健所長に出します。
    保健所長を経て厚生労働大臣に届きます。
    医療法施行令 第 4 条の 9、医療法施行規則 第 13 条
  • 医療施設調査3 年ごとの医療施設静態調査の調査票も、保健所長に出します。
    2026 年は 10 月 1 日現在で行われました。
    統計法の基幹統計

出典: 感染症法(e-Gov 法令)、食品衛生法(e-Gov 法令)、医療機関における院内感染対策について(厚生労働省)、医療法施行令(e-Gov 法令)、医療法施行規則(e-Gov 法令)、医療施設調査 調査の概要(厚生労働省)

開設の許可や届出の相手は、法律では都道府県知事です(第 3 章、第 5 章)。
ただ、関東信越厚生局の案内が「保健所へ開設に関する届出又は開設申請を行います」と書いているように、受付は保健所が行うことがあります。
自院の手続きの窓口は、都道府県や市の案内で確かめます。

都道府県、保健所を設置する市、特別区は、医療安全支援センターも設けています(医療法 第 6 条の 13)。
患者や家族からの苦情や相談に応じ、病院などに助言や情報の提供、研修を行う窓口です(医療安全支援センター運営要領(厚生労働省PDF))。

市町村の 5 つの顔

市町村は、病院に許可や指定をする立場ではありません。
それでも、住民の医療と介護の多くを支えています。

  • 1国民健康保険の窓口2018 年度から都道府県も保険者になりましたが、資格や保険料の身近な窓口は引き続き市町村です。国民健康保険法 第 3 条、第 4 条
  • 2後期高齢者医療75 歳以上の医療は、都道府県ごとにすべての市町村が入る広域連合が運営します。
    保険料を集めるのは市町村です。
    高齢者の医療の確保に関する法律 第 48 条
  • 3介護保険の保険者介護保険を行うのは市町村と特別区です。
    在宅医療と介護の連携も、市町村の事業です。
    介護保険法 第 3 条、第 115 条の 45
  • 4健診と保健国民健康保険の加入者の特定健康診査、がん検診など。
    市町村保健センターを設けることができます。
    高齢者の医療の確保に関する法律 第 20 条、地域保健法 第 18 条
  • 5公立病院の開設者自治体が開く公立病院は、2025 年度に 841 病院、195,536 床。
    全国の病院の 10.6%、病床の 13.5% です。
    総務省(建設中を除く)

出典: 国民健康保険法(e-Gov 法令)、高齢者の医療の確保に関する法律(e-Gov 法令)、介護保険法(e-Gov 法令)、平成 30 年 4 月から国民健康保険制度が変わります(厚生労働省PDF)、公立病院経営強化プランの取組状況等について(総務省PDF)

介護保険の保険者として、市町村は地域包括ケアシステムの中心にいます。
厚生労働省は、地域包括ケアシステムを「保険者である市町村を中心に、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていく」ものと説明しています(地域包括ケアシステム(厚生労働省))。
在宅医療と介護の連携の手引きは、「都道府県や保健所の支援の下、市町村が中心となって、地域の郡市区医師会等と緊密に連携することが重要である」としています(在宅医療・介護連携推進事業の手引き Ver.4(厚生労働省PDF))。
要介護認定の申請があったとき、市町村は主治医に意見を求めます(介護保険法 第 27 条)。

休日や夜間の軽い急病(初期救急)は、国の指針で「診療所及びそれを補完する休日夜間急患センターや在宅当番医制において、地域医師会等の協力により実施され」るとされています(救急医療の体制構築に係る指針(厚生労働省PDF))。

公立病院と、経営強化プラン

公立病院の約 65%(550 団体)は人口 10 万人未満の市町村に、約 32%(270 団体)は 3 万人未満の市町村にあります(公立病院の役割(総務省PDF))。
総務省のガイドラインは、公立病院を持つ自治体に経営強化プランを作るよう求めています。
期間は、作った年度かその次の年度から 2027 年度(令和 9 年度)までが標準です。

  • 役割と機能の最適化と連携の強化
  • 医師や看護師などの確保と、働き方改革
  • 経営形態の見直し
  • 新興感染症への備え
  • 施設と設備の最適化
  • 経営の効率化

経営強化プランの 6 つの柱。
出典: 持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン(概要)令和 4 年 3 月 29 日(総務省PDF)

都道府県は、市町村のプランや公立病院の建て替えなどについて、地域医療構想との整合などを助言します。
次のガイドラインは、総務省の検討会(2026 年 9 月 29 日に第 1 回)で議論されています。

2027 年 4 月から、市町村は調整会議の一員に

2027 年 4 月から市町村も調整会議に立場 1病院の開設者立場 2介護保険事業の主体立場 3住民に最も近い行政外来医療の協議の場介護にかかわるときに参加

令和 7 年の改正医療法で、2027 年 4 月から、地域医療構想調整会議の関係者に市町村が明記されます(第 6 章)。
国のガイドラインは、市町村の立場を次のように書いています。

市町村は、病院開設者の立場、介護保険事業の主体としての立場、行政の中で住民に最も近い立場など、様々な観点を踏まえながら、地域医療構想の策定及び推進に協力する必要がある。

地域医療構想策定ガイドライン 令和 8 年 7 月 3 日 p.11(厚生労働省PDF)

外来医療の協議の場でも、介護などにかかわることを協議するときは、関係する市町村の参加を求めることになっています(医療法 第 30 条の 18 の 5)。

自院で確かめること

  • 自院を管轄する保健所の名前と設置主体(県か、市か、区か)。
    感染症と食中毒の届出の連絡先が、院内の手順書に書かれているか。
  • 毎月 10 日までの病院報告を、だれがどの方法で出しているか。
  • 自院の地域で、在宅医療と介護の連携の相談窓口がどこにあり、自院の地域連携の担当とつながっているか。

この章の一次資料

  • 地域保健法 第 5 条、第 6 条、第 18 条(e-Gov 法令)、医療法 第 6 条の 13、第 25 条、第 30 条の 18 の 5(e-Gov 法令)
  • 医療法施行令 第 4 条の 9(e-Gov 法令)、医療法施行規則 第 13 条(e-Gov 法令)
  • 感染症法 第 12 条(e-Gov 法令)、食品衛生法 第 63 条(e-Gov 法令)
  • 国民健康保険法 第 3 条、第 4 条(e-Gov 法令)、高齢者の医療の確保に関する法律 第 20 条、第 48 条(e-Gov 法令)、介護保険法 第 3 条、第 27 条、第 115 条の 45(e-Gov 法令)
  • 設置主体別保健所数(令和 8 年 4 月 1 日現在)(厚生労働省PDF)、地域保健対策の推進に関する基本的な指針(厚生労働省PDF)
  • 医療機関における院内感染対策について 平成 26 年 12 月 19 日 医政地発 1219 第 1 号(厚生労働省)、医療安全支援センター運営要領(厚生労働省PDF)
  • 地域包括ケアシステム(厚生労働省)、在宅医療・介護連携推進事業の手引き Ver.4(厚生労働省PDF)、救急医療の体制構築に係る指針(厚生労働省PDF)
  • 公立病院経営強化(総務省)、公立病院の役割(総務省PDF)、公立病院経営強化ガイドライン(概要)(総務省PDF)、公立病院経営強化プランの取組状況等について 2026 年 9 月 29 日(総務省PDF)
  • 地域医療構想策定ガイドライン 令和 8 年 7 月 3 日(厚生労働省PDF)

制度や数値は掲載時点の情報です。最新の内容は所管の原文でご確認ください。 権限の委譲や受付の窓口は自治体で異なります。自院の所管は、都道府県と地方厚生局のサイトでお確かめください。 内容の誤りは訂正受付窓口からお知らせください。