第5章 SNS、動画、口コミ、外部サイト
病院の公式アカウントで、患者の投稿を引用してよいのでしょうか。
口コミサイトの投稿に返信してよいのでしょうか。
ホームページ以外の媒体は、判断に迷う場面が多い箇所です。
この章では、SNS と動画、患者の口コミ、外部のサイト、職員募集と講演会、そして制作会社との分担を見ていきます。
公式アカウントの投稿は、1 つずつが広告
病院の公式アカウントの投稿は、病院名が分かり、受診を誘引する意図があるので広告です。
事例解説書は、SNS のプロフィール、投稿、返信、画像と動画の音声、ハッシュタグのどこにあっても対象になるとしています(事例解説書(厚生労働省PDF)事例(39))。
動画サイトも、プロフィール、動画、タイトル、概要欄、テロップ、音声が対象です(事例(44))。
個人のアカウントでも、病院と医師が特定でき、誘引性があれば同じです。
SNS上の1つの投稿は、単独で1つの広告として取り扱われる。
そのため、各投稿内において、当該投稿のみで必要な情報が完結し、かつ一体的で一覧性のある情報提供が行われていることが求められる。
事例解説書 第 6 版 事例(40)SNS における広告形態と主な違反形態(厚生労働省PDF p.61)
これは自由診療の投稿で効いてきます。
人間ドックの案内を投稿するなら、その投稿の中で、内容、費用、期間と回数、リスクと副作用、問い合わせ先がそろっている必要があります(第 4 章)。
費用は X に、リスクは Instagram に、と分けるのは認められません(事例(40))。
同じ SNS の中で、「詳細は固定した 1 投稿目をご覧ください」と場所を示して近くに置く形は、改善例として挙げられています。
動画は、動画の中か、タイトルと概要欄との組み合わせで一体的に示します(事例(45))。
治療の前後の写真を SNS に投稿するなら、写真の近くに治療の内容、費用、期間と回数、リスクの説明を付けます。
返信で写真の付近に付ける形が改善例です。
自院のホームページへのリンクだけでは足りません(事例(42))。
動画で気をつけたいのは、患者のインタビューです。
患者が治療の感想を話す映像と音声は体験談にあたります。
リスクや副作用について患者が話している場合も同じです(事例(46))。
「今なら半額」のような費用の強調は、動画でも品位を損ねる広告です(事例(48))。
患者の口コミは、病院が触らなければ広告ではない
患者が自分の SNS や、第三者が運営する口コミサイトに書いた感想は、病院が費用を負担したり掲載を依頼したりしていなければ、広告ではありません(医療広告等ガイドライン(厚生労働省PDF)p.11、Q&A Q2-11)。
地図サービスに付く口コミも、ガイドラインの「第三者が運営するいわゆる口コミサイト等」が最も近い箇所です。
広告になるのは、病院が口コミに手を入れたときです。
Q&A は、誘引性が生じる場合を 3 つ挙げています(Q1-18)。
- 病院が投稿を依頼する有償でも無償でも、病院が患者に投稿を頼むと誘引性が生じ、広告になります。
「いいね」や投稿のお願いも同じです。Q&A Q1-18、ガイドライン p.6 - 運営者に編集させる口コミサイトの運営者に、否定的な投稿を消して肯定的な投稿を上に出すよう頼むと、誘引性が生じます。Q&A Q1-18、事例(19)
- 運営費を事後に負担する編集されたサイトの運営費を、あとから病院が負担する場合も同じです。Q&A Q1-18
- 何もしない患者が自分の意思で書き、病院の影響を受けていない推薦にとどまる限り、誘引性はなく、広告ではありません。Q&A Q1-18、Q2-11
自院のサイトや SNS に口コミを転載すると、それは病院の広告になり、体験談として禁止されます(第 2 章、事例(17))。
公式アカウントで患者の投稿を引用したりリポストしたりするのも、他者の投稿の引用による体験談の紹介にあたります(事例(41))。
口コミへの返信そのものを禁じる記述はありません。
ただし、病院が書く返信は病院の表示です。
お礼と案内にとどめ、治療の効果や優劣に触れない書き方が、第 2 章の禁止に触れない形です。
ランキング、ポータルサイト、雑誌の「名医」
外部のサイトや出版物に自院が載るとき、病院が費用を負担したり依頼したりすると、その掲載は病院の広告になります。
ガイドラインの記事風広告(p.6、Q1-4)と同じ考え方です。
- 口コミに基づくランキングを装って特定の医療機関を強調するサイトは、比較優良広告にあたる可能性があります(Q2-10)。
- 雑誌の「日本が誇る 50 病院」のような一覧を、ほかの病院名を含めて自院のサイトに転載すると、載っていない病院より優れている旨を示す比較優良広告になります(Q1-2)。
記事の引用そのものは、その部分が医療法とガイドラインに沿っていれば可能です(Q1-1)。 - 「雑誌で紹介されました」と自院のサイトに書くのは、問い合わせ先の明示(限定解除)が要ります(事例(27))。
- 情報サイトに出すバナー広告は、広告可能事項の範囲だけです(事例(36)、第 4 章)。
ポータルサイトの運営会社も規制の対象です。
Q&A は、サイトの運営会社や広告代理店にも是正が命じられたり罰則が科されたりすることがあると答えています(Q5-2)。
掲載を申し込むときは、掲載の内容が自院の広告として見られることを前提に、文言を確かめます。
この講座を載せている病院ドックも、病院の情報を表示する第三者のサイトです。
病院から費用を受けず、公的なデータをそのまま表示し、順位や点数や優劣の断定を出さない設計にしています。
それでも、第三者のサイトが扱い次第で広告になることは Q1-18 と Q5-2 のとおりで、病院ドックが対象外だと断定はできません。
病院ドックの診断結果を自院のサイトに引くときの書き方は、第 3 章のとおりです。
職員募集、講演会、オンライン診療
職員募集の広告は、受診を誘引するものではないので、ガイドラインの対象外です(p.6)。
ただし、求人ページに「地域 No.1 の手術実績」「最新の設備で安心の医療」のような診療の宣伝を書くと、その部分は患者に向けた表示にもなります。
求人ページは、働く条件と職場の情報に絞ります。
患者や地域住民向けの講演会の案内は、受診を誘引することを意図していない広告であれば対象外です(Q1-17)。
講演のテーマ、日時、会場、講師の案内にとどめます。
オンライン診療を実施している旨は書けます(Q3-27、ガイドライン p.26)。
2026 年 4 月から、病院の医師が「オンライン診療受診施設」でオンライン診療を行う旨も広告可能事項になりました(第 15 号、p.30)。
受診施設の側の広告には、「オンライン診療は、当施設が提供するものではなく、〇〇医療機関と連携して実施しております」のように、医療を提供するのは医療機関であることを明示する必要があります(Q4-1)。
「オンライン診療スポット」のような紛らわしい名称は付けられません(Q4-2)。
病院が受診施設と連携するときは、受診施設の掲示にも目を通します。
制作会社との分担を、契約に書く
第 1 章のとおり、規制の対象は病院に限らず誰でも(法律の言葉では「何人も」)で、制作会社と広告代理店も指導と是正命令の対象になり得ます(p.7、Q5-2)。
一方で、広告は「医療機関等が自らの意思により行う必要がある」(p.2)ので、責任の中心は病院です。
実務では、次の 3 つを契約か覚書に書いておくと、通知が届いたときに動けます。
- 公開前の確認新しいページ、検索広告の文言、SNS の投稿の型は、公開前に病院の担当者が確かめる。
確かめる人の名前を決める。 - 通知が届いたときの修正ネットパトロールや自治体から通知が届いたら、制作会社が何日以内に修正案を出すかと、費用の扱いを決める。
- 年に 1 回の見直しガイドラインは毎年 3 月ごろに改正される。
年に 1 回、制作会社と一緒に版と自己点検を見直す。
これは制作会社に責任を移すためではなく、病院が自らの意思で広告を行う体制を、書面にしておくためです。
数字で見る。監視は SNS と動画に広がっている
厚生労働省のネットパトロールは、通報を待つだけでなく、キーワードで検索してサイトと SNS を調べる能動監視を令和 4 年度から行っています。
件数は令和 4 年度の 63 サイトから、令和 7 年度は 413 サイト(2026 年 1 月 9 日時点、目標 500)に増えました。
令和 4〜6 年度は各年度の実績、令和 7 年度は 2026 年 1 月 9 日時点。
出典: ネットパトロール事業について(令和 7 年度)(厚生労働省PDF)第 7 回 医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会 資料 2
令和 7 年度の能動監視の媒体は、ウェブサイト 264、YouTube 67、Instagram 34、X 24、TikTok 24 です。
媒体によって違反の傾向が違い、ウェブサイトと YouTube は「広告可能事項以外」が最も多く、Instagram と TikTok は「治療の前後の写真」が最も多いと資料は説明しています。
令和 7 年度からは AI を使った違反チェックの仕組みも導入され、1 サイトあたりの作業時間が短くなったとしています。
テーマは美容、がん、歯科、オンライン診療などで、病院が中心ではありませんが、公式アカウントの投稿も同じ基準で見られます。
自院で確かめること
- 公式の SNS と動画に、患者の投稿の引用やリポスト、患者のインタビュー、写真だけの症例紹介がないかを見る。
- 口コミサイトやポータルサイトへの掲載で、費用を払っているもの、投稿や編集を依頼したものがないかを見る。
- 制作会社や広告代理店との契約に、公開前の確認、通知が届いたときの修正、年 1 回の見直しの分担が書かれているかを見る。
言葉ごとの区分と出典は、表現の早見で引けます。
判断に迷うときは、所管の自治体の相談窓口(医療広告相談窓口一覧(厚生労働省PDF))へ相談します。
この章の一次資料
- 医療広告等ガイドライン 令和 8 年 3 月 30 日最終改正。
第 2 対象範囲 p.4〜7、第 3-1 の(6)体験談 p.11、第 3-2 の(15)p.30、第 3-3 p.35、第 4 オンライン診療受診施設 p.36〜39(厚生労働省PDF) - 医療広告等ガイドラインに関する Q&A 令和 8 年 3 月更新。
Q1-1、Q1-2、Q1-4、Q1-17、Q1-18、Q2-10、Q2-11、Q3-27、Q4-1、Q4-2、Q5-2(厚生労働省PDF) - 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書 第 6 版。
事例(17)、(19)、(27)、(36)、(39)〜(49)(厚生労働省PDF) - ネットパトロール事業について(令和 7 年度)第 7 回 医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会 資料 2、2026 年 3 月 26 日。
p.6〜9(厚生労働省PDF)
公表された調査報告書などの公開情報をもとに執筆しています。記載の経緯や数値は掲載時点のものです。 法令の適用は個別の事情で異なります。判断に迷うときは、所管の自治体の相談窓口へご相談ください。 内容の誤りは訂正受付窓口からお知らせください。