第3章 病院が書いてよい実績
書いてはいけないことばかりではありません。
医療法は、病院が書いてよい事項(広告可能事項)を 16 の号で定め、ガイドラインがその中身を細かく示しています。
病院の強みである指定、施設基準の届出、専門医、手術件数、平均在院日数は、条件を守れば書けます。
この章では、書ける実績と、その書き方の条件を見ていきます。
法令の指定と国の事業は、そのまま書ける
医療法第 6 条の 5 第 3 項の第 5 号は、「法令の規定に基づき一定の医療を担うものとして指定を受けた病院若しくは診療所」である旨を広告可能事項としています。
ガイドラインは、指定を受けた旨、法令における名称、その略称を書けるとし、次のような指定を例示しています(厚生労働省PDF p.17〜19)。
- 保険医療機関、労災保険指定病院、臨床研修指定病院
- 精神保健指定医、指定病院、応急入院指定病院
- 生活保護法指定医療機関、指定自立支援医療機関
- 特定、第一種、第二種の感染症指定医療機関、結核指定医療機関
- 依存症専門医療機関、看護師特定行為研修指定研修機関
この一覧は例示で、載っていない指定でも、法令に基づいて受けたものなら書けます。
地域医療支援病院(医療法第 4 条の承認)は例示に入っていませんが、同じ扱いです。
救急病院、災害拠点病院、へき地医療拠点病院、総合周産期母子医療センター、がん診療連携拠点病院、紹介受診重点病院のような国の事業に基づくものは、告示の第 4 条で書けると定められています。
制度の概要と、認定を受けた年月日も書けます(p.30)。
書き方の注意は 1 つです。
指定や承認は「受けている旨」を書くもので、「国が認めた優れた病院」のような優劣の表現にすると比較優良広告になります。
施設基準の届出は「適合、内容、届出日」まで
診療報酬の施設基準は、病院の体制を示す実績です。
ガイドラインは、次のように書けるとしています。
診療報酬上の各種施設基準を満たす保険医療機関として地方社会保険事務所又は都道府県知事に届出をした場合、各基準に適合している旨、当該基準の内容や届出日等を広告可能であること。
医療広告等ガイドライン 第 3-2 の(13)提供される医療の内容に関する事項 イ②(厚生労働省PDF p.28)
気をつけたいのは言葉の選び方です。
施設基準は、要件を満たしている旨を病院が届け出るもので、国が審査して認定するものではありません。
事例解説書の事例(13)は、「〇〇加算施設として、厚生労働省に認定されました!」「国の認証を取得しました」という書き方を、行政のお墨付きを得ていると誤認させる誇大広告としています。
改善例は「加算要件を満たした医療機関として、届出済みです」です(厚生労働省PDF p.20)。
書けない例(架空)
当院は厚生労働省から、地域包括ケア病棟の認定を受けました。
届出を「認定」と書くと、国のお墨付きと誤認させる誇大広告にあたります。
書ける例(架空)
地域包括ケア病棟入院料 1 の施設基準に適合している旨を、2026 年 4 月 1 日に届け出ています。
適合している旨、基準の内容、届出日の 3 つを、そのまま書きます。
自院の届出の一覧は、病院ドックの施設基準のページで確かめられます。
病院ドックは公的なデータをそのまま表示する第三者のサイトで、病院の順位や点数は出しません。
診断の結果を自院のサイトに引くときも、届出の事実と出典と基準日を書き、「強み」を「地域で最も充実」のような優劣の断定に変えないようにします。
医師の紹介は、専門医の書き方が決まっている
医師の氏名、年齢、性別、役職、略歴は書けます(第 9 号)。
専門性の資格は、次の 2 つに限られます。
- 書ける日本専門医機構、日本歯科専門医機構が認定した専門医(基本的な 19 の診療領域)。
「医師〇〇(日本専門医機構認定 内科専門医)」のように、団体名と資格名を併せて書く。ガイドライン p.21〜22 - 書ける(当分の間)厚生労働大臣に届け出た学会の専門医(医師 56 資格)。
「〇〇学会認定 〇〇専門医」と書く。
令和 3 年 10 月の告示改正の経過措置で、当分の間書ける。ガイドライン p.21、Q3-5、Q3-6 - 書けない「厚生労働省認定〇〇専門医」は虚偽広告。
団体名のない「〇〇専門医」は誇大広告。
認定医、指導医、研修歴、産業医は広告可能事項ではなく、ホームページでは限定解除の要件が要る。ガイドライン p.22、Q3-5、Q3-7、事例(26)
書ける学会と資格の一覧は、厚生労働省が公表しています(医療に関する広告が可能となった医師等の専門性に関する資格名等について(厚生労働省PDF)令和 5 年 2 月 17 日)。
学会の役員や医師会の役職は、現任で、役員名簿が公開されていれば略歴として書けます。
単に会員である旨は原則として書けません。
医学博士は、取得した年と大学を併せて書くことが望ましいとされています(Q3-15)。
非常勤の医師は、非常勤である旨か勤務する日時を示せば書けます(p.22)。
手術件数、分娩件数、平均在院日数は、期間と公表が条件
医療の提供の結果(第 14 号)として、病院で行った手術の件数、分娩の件数、平均在院日数、患者数、平均病床利用率が書けます。
条件は 2 つです。
手術件数を広告する際には、当該手術件数に係る期間を暦月単位で併記する必要があること。
(中略)広告された内容(手術件数)の正否が容易に検証できるようその広告された手術件数について、ウェブサイト、年報等広く住民に周知できる方法により公表されていること。
医療広告等ガイドライン 第 3-2 の(14)ア 手術件数(厚生労働省PDF p.28)
期間を月の単位で併記することと、サイトや年報で公表していることです。
Q&A は、過去 30 年分の総数のような書き方は現在の医療の内容を誤認させるおそれがあるとし、1 年ごとに集計して複数年を示すことが望ましいとしています(Q3-17)。
事例解説書の事例(15)は、「〇〇手術と××手術の実績はのべ 1,500 件を超えています!」「対象期間 1985 年〜2018 年」を、内訳のない書き方の例として挙げています。
見直したい例(架空)
開院以来の手術実績 のべ 12,000 件。
期間の併記がなく、手術の種類ごとの内訳もありません。
長期間の合計は現在の内容を誤認させるおそれがあります。
書ける例(架空)
人工関節置換術 2025 年 1 月〜12 月 128 件(2024 年 115 件、2023 年 102 件)。
件数は病院年報で公表しています。
手術ごとに、期間を月の単位で示し、1 年ごとに複数年。
公表の場所も書きます。
手術件数として書けるのは、診療報酬の手術、先進医療として届け出た手術、承認された医療機器を使う手術です。
医師個人の手術件数は広告可能事項ではなく、ホームページでは限定解除の要件を満たし、根拠を示せることが要ります(Q3-16)。
平均在院日数は、病院全体のほか、病床の区分、病棟、診療科、疾病ごとにも書けます。
計算式はガイドラインが示しています(p.28〜29)。
紹介率と逆紹介率は、算定式と算定に使った患者数を公表していることが条件です(p.25)。
患者満足度調査は、実施している旨と、結果を提供している旨、結果の入手方法は書けますが、結果の数字そのものは書けません。
治療結果の分析も同じです(p.29〜30)。
病床数、職員数、設備、そのほか書けるもの
ほかにも、病院のサイトの基本の情報はほぼ書けます。
書き方の条件だけを押さえます。
- 病床数と職員数(第 8 号)。
病床の種別や病棟ごとの数も書けます。
職員数は、いつの時点の数かを月の単位で併記し、サイトや年報で公表し、少なくとも年に 1 度は更新します。
実態より多い数のままにしておくと誇大広告です(p.20、p.9)。 - 手術室や ICU の設備。
「いつでも利用可能」と誤認させる表現は認められません(p.20)。 - 医療機器。
据え置き型の機器の配置とメーカー名は書けますが、販売名と型式番号は書けません(p.20、Q3-12)。
保有していない機器のイメージ画像は虚偽広告です(Q2-18)。 - 従業者や診療風景の写真。
人員配置や検査風景の写真は書けます。
治療の前後の写真は第 2 章のとおりです(Q3-13、Q3-14)。 - 日本医療機能評価機構の評価の結果、ISO の審査登録、JCI の認定、外部監査を受けている旨(監査は受けた年月を併記。
p.32〜33)。 - 相談窓口、医療安全の取組、個人情報の取扱い、セカンドオピニオンの実績、紹介できる介護施設(第 10 号、第 11 号、告示第 3 条)。
- 院長のあいさつ、キャッチコピー、開院の周年、内覧会の案内(Q1-6、Q3-8)。
名称は、正式な名称のほか、その病院と分かる略称と英語名が書けます。
「〇〇センター」を併せて書く条件は第 2 章のとおりです。
診療科名は政令で定められたものに限られ、「糖尿病外来」のような専門外来や「総合診療科」は、ホームページでは限定解除の要件を満たして書きます(Q2-6、Q3-4)。
自院で確かめること
- 施設基準や指定の紹介に「認定」「認証」「お墨付き」の語がないか、届出は「適合している旨、基準の内容、届出日」の形になっているかを見る。
- 医師紹介のページで、専門医に団体名が付いているか、認定医や研修歴に問い合わせ先の明示があるかを見る。
- 手術件数、分娩件数、平均在院日数、職員数に、期間か時点の併記と、年報などでの公表があるかを見る。
言葉ごとの区分と出典は、表現の早見で引けます。
判断に迷うときは、所管の自治体の相談窓口(医療広告相談窓口一覧(厚生労働省PDF))へ相談します。
この章の一次資料
- 医療法 第 6 条の 5 第 3 項(広告可能事項 16 号)(e-Gov 法令検索)
- 医療広告等ガイドライン 令和 8 年 3 月 30 日最終改正。
第 3-2 広告可能な事項 p.13〜34(厚生労働省PDF) - 医療広告等ガイドラインに関する Q&A 令和 8 年 3 月更新。
Q1-6、Q2-6、Q2-18、Q3-4〜Q3-8、Q3-12〜Q3-17(厚生労働省PDF) - 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書 第 6 版。
事例(13)、(14)、(15)、(26)、(27)(厚生労働省PDF) - 医療に関する広告が可能となった医師等の専門性に関する資格名等について 令和 5 年 2 月 17 日(厚生労働省PDF)
公表された調査報告書などの公開情報をもとに執筆しています。記載の経緯や数値は掲載時点のものです。 法令の適用は個別の事情で異なります。判断に迷うときは、所管の自治体の相談窓口へご相談ください。 内容の誤りは訂正受付窓口からお知らせください。