第4章 自由診療のページと限定解除

執筆者/監修

菅沼 大樹 SUGANUMA Daiki

株式会社ウェブリク 代表取締役

情報処理安全確保支援士(国家資格 第024888号)
医業経営コンサルタント(登録番号8645号)

国立大学法人 電気通信大学卒。
大手 SIer でのシステム開発とシンガポールの広告代理店でのマーケティングを経て、2016年に株式会社ウェブリクを設立。病院専門のホームページ制作と採用支援に取り組む。

人間ドックのページに、コースの内容と費用を書いてよいのでしょうか。
医療法は、広告に書ける事項を 16 の号に限っています。
しかしホームページには、この限定を解く仕組みがあります。
それが限定解除です。
この章では、限定解除の 4 つの要件と、病院の自由診療のページの書き方、そして限定解除が効かない検索広告を見ていきます。

ホームページは、患者が自ら見に来る情報

医療法第 6 条の 5 第 3 項は、「厚生労働省令で定める場合を除いては」広告可能事項以外の広告をしてはならないと定めています。
この「省令で定める場合」が、医療法施行規則第 1 条の 9 の 2 の限定解除です。
ガイドラインは、ホームページは患者が自ら求めて入手する情報なので、要件を満たせば広告可能事項の限定を解いてよいとしています(医療広告等ガイドライン(厚生労働省PDF)p.34〜35)。

要件は次の 4 つで、すべて満たす必要があります。
③と④は、自由診療について書く場合に限ります。

  • ①患者が自ら求めて入手する情報であること「医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること」。
    ホームページ、メールマガジン、求めに応じて送るパンフレット、アプリが当たります。
    省令第 1 条の 9 の 2 第 1 号、ガイドライン p.35
  • ②問い合わせ先を明示すること「表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること」。
    電話番号かメールアドレスです。
    省令第 1 条の 9 の 2 第 2 号、ガイドライン p.35
  • ③自由診療の内容と費用を書くこと「自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること」。
    自由診療について書く場合だけの要件です。
    省令第 1 条の 9 の 2 第 3 号、ガイドライン p.35
  • ④自由診療のリスクと副作用を書くこと「自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること」。
    これも自由診療について書く場合だけの要件です。
    省令第 1 条の 9 の 2 第 4 号、ガイドライン p.35

自由診療とは、省令の定義では、医療保険各法と公費負担医療の給付の対象にならない検査、手術、そのほかの治療です。
人間ドックと健診、自費の予防接種、先進医療の自費の部分、自費のリハビリテーションは、病院でも自由診療にあたります。

限定解除で解けるのは、「広告可能事項以外は書けない」という限定だけです。
虚偽、比較優良、誇大の禁止と、省令の体験談と治療の前後の写真の禁止は、限定解除しても残ります(p.34、第 2 章)。

問い合わせ先は、電話番号かメールアドレス

限定解除の要件 ②問い合わせ先の明示電話番号代表電話を各ページにメールアドレス問い合わせ用のアドレス要件を満たさない予約専用、自動音声だけ見にくい置き方極端に小さい文字、同系色

②の問い合わせ先は、「電話番号、E メールアドレス等」です(p.35)。
Q&A は、予約専用の番号で問い合わせできる旨がないもの、自動音声だけで折り返しがないもの、受付の自動返信だけで返答がないメールは、患者が容易に照会できるとは言えず、要件を満たさないとしています(医療広告等ガイドラインに関する Q&A(厚生労働省PDF)Q6-10)。
代表電話と問い合わせ用のメールアドレスを、各ページの見える位置に置くのが確実です。

限定解除のために載せる情報は、患者が容易に見られることが要ります。
極端に小さい文字、背景と同系統の文字の色、わざと情報量を増やして見逃させる形は認められません(Q6-11)。

事例解説書で唯一、病院の画面を使った事例(27)は、まさにこの問い合わせ先の話です。
「〇〇専門外来」、法令上の根拠のない診療科名(糖尿病科、認知症科、化学療法科など)、届出のない専門性の資格、医師個人の手術件数、雑誌やニュースで紹介された旨を、問い合わせ先を明示せずに載せていた例で、改善例は電話番号とメールアドレスを記載することでした(事例解説書(厚生労働省PDF)p.37)。
病院の場合、限定解除の最初の一歩は、問い合わせ先を各ページに置くことです。

人間ドックと健診、予防接種、先進医療

病院の自由診療人間ドックと健診実施している旨広告可能事項(告示)検査項目、費用、流れ限定解除の 4 要件で自費の検査保険適用外の旨と費用健康診査として書けないアンチエイジングドック

病院の自由診療で最も多いのは、人間ドックと健診です。
健康診査を実施している旨は、告示で広告可能事項とされています(第 16 号、告示第 4 条。
ガイドライン p.31)。
脳ドックも、無症状の人を対象に MRI と MRA で脳と脳血管の病気を見つける検査として、健康診査に含めて書けます(Q3-10)。
一方、「遺伝子検査」「アンチエイジングドック」は健康診査として書けません(p.31)。

コースの検査項目、費用、所要時間、結果の説明の流れまで書くページは、広告可能事項の範囲を超えるので、限定解除の 4 つの要件を満たして書きます。
自費の検査は、保険の給付の対象にならない旨と標準的な費用を併せて書くことが、告示の条件でもあります(告示第 2 条、Q3-9)。

見直したい例(架空)

人間ドック 基本コース 45,000 円〜。
最新の検査機器で安心。
ご予約は予約専用ダイヤルへ。

最低金額だけで内容がなく、リスクの記載がありません。
「最新」「安心」は根拠が要ります。
予約専用の番号は問い合わせ先になりません。

書ける例(架空)

人間ドック 基本コース(保険適用外)。
検査項目: 身体計測、血液検査、胸部 X 線、腹部超音波、上部消化管内視鏡。
所要時間は約 3 時間。
費用 48,000 円(税込)。
オプション検査は別途 5,000〜20,000 円。
主なリスク: 内視鏡検査で出血やのどの違和感が生じることがあります。
鎮静剤を使う場合は当日の運転ができません。
お問い合わせ: 健診の窓口 0XX-XXX-XXXX、kenshin@example.jp

保険適用外の旨、内容、標準的な費用と追加費用の範囲、リスク、問い合わせ先がそろっています。

予防接種を実施している旨は書けますが、ワクチンの商品名は書きません(p.31)。
自費の予防接種の費用は、健診と同じ考え方で書きます。
先進医療は、告示第 2 条の評価療養にあたるので、実施している旨と内容を書けます。
自費の部分の費用は、標準的な費用として書きます。
承認された医薬品や医療機器を使う自由診療は、保険が適用されない旨と標準的な費用の併記が条件です(Q3-9、事例(25))。

未承認の医薬品や医療機器、承認された効能と違う目的での使用は、限定解除に加えて 5 つの項目が要ります。
未承認である旨、入手経路、国内に承認された医薬品等があるかどうか、諸外国での安全性の情報、医薬品副作用被害救済制度の対象にならない旨です(p.35〜36、Q2-14)。
病院で当たりうるのは自費の再生医療や自費の点滴などで、事例(29)〜(31)が書き方の型を示しています。

費用とリスクは、利点と同じ大きさで

限定解除の要件 ③と④費用とリスクは同じ大きさ¥費用標準的な費用、期間と回数!リスクと副作用同じページに、同じ大きさ足りない書き方「状態により異なります」強調は別の違反「今なら〇円」「〇% OFF」

③の費用は、「通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間及び回数」を載せます。
標準的な費用が明確でないときは、最低金額から最高金額までの範囲を、発生頻度の高い追加費用を含めて示します(p.35)。
事例解説書の事例(28)は、不備の型を並べています。

  • 「料金は患者様の状態により異なります」とだけ書く。
  • 「150,000 円〜」のように最低金額だけを書く。
  • 追加で発生する費用を、小さな文字で、金額を書かずに載せる。
  • 治療の内容を「世界的に流行しています」のようにしか説明しない。
  • 期間と回数を「患者様の状態により異なります」で済ませる。

④のリスクと副作用は、リンク先のページに置いたり、利点より極端に小さな文字で載せたりしてはいけません(p.35)。
「元に戻る」「数回の注射が必要な場合がある」だけでは足りません(Q6-12)。
「治療費が高額になる」は費用の話で、リスクではありません。
禁忌と注意事項も、リスクと副作用の記載にはなりません(事例(28))。

費用を書くことと、費用を強調することは別です。
「今なら〇円」「〇% OFF」は品位を損ねる広告です(第 2 章)。

検索広告とバナー広告は限定解除できない

限定解除の①は「患者等が自ら求めて入手する情報」です。
ガイドラインは、バナー広告と、検索サイトでスポンサーとして表示されるもの、費用を払って検索結果の上位に表示させたものは、①を満たさないとしています(p.35)。
つまり、病院が出す検索広告(いわゆるリスティング広告)とバナー広告には限定解除がなく、書けるのは広告可能事項の範囲だけです。

事例解説書は、一律に禁止されているわけではないと念を押しています。

なお、バナー広告自体が一律禁止されているわけではなく、広告可能事項の範囲内であれば広告可能である。

事例解説書 第 6 版 事例(36)バナー広告における違反(厚生労働省PDF p.55)

検索広告も同じです(事例(37))。
広告のリンク先のホームページは、患者が自ら見に来る情報なので、要件を満たせば限定解除できます(Q1-7)。

見直したい検索広告(架空)

安心の人間ドック 最新機器で早期発見 〇〇病院
今なら基本コース 40,000 円

「安心」「最新」は根拠が要り、費用の強調は品位を損ねます。
そもそも検索広告には限定解除がありません。

書ける検索広告(架空)

〇〇病院 人間ドックと健康診査を実施
〇〇市〇〇町 電話 0XX-XXX-XXXX

名称、所在地、電話番号、健康診査の実施は広告可能事項です。
詳しい内容は、限定解除したホームページに書きます。

検索広告の文言は、広告代理店が作ることの多い箇所です。
第 5 章の制作会社との分担に、検索広告の文言の確認を含めます。

自院で確かめること

  • 人間ドック、健診、自費の予防接種のページに、保険適用外である旨、内容、標準的な費用、期間と回数、主なリスクと副作用、問い合わせ先がそろっているかを見る。
  • 問い合わせ先が予約専用の番号や自動応答だけになっていないか、リスクの文字が利点より小さくなっていないかを見る。
  • 検索広告とバナー広告の文言が、名称、所在地、診療科名、健康診査の実施のような広告可能事項の範囲に収まっているかを見る。

言葉ごとの区分と出典は、表現の早見で引けます。
判断に迷うときは、所管の自治体の相談窓口(医療広告相談窓口一覧(厚生労働省PDF))へ相談します。

この章の一次資料

  • 医療法施行規則 第 1 条の 9 の 2(限定解除の要件)(e-Gov 法令検索)
  • 広告告示(平成 19 年厚生労働省告示第 108 号)第 2 条、第 4 条(厚生労働省法令等データベース)
  • 医療広告等ガイドライン 令和 8 年 3 月 30 日最終改正。
    第 3-2 の(16)健康診査と予防接種 p.31、第 3-3 広告可能事項の限定解除の要件 p.34〜36(厚生労働省PDF)
  • 医療広告等ガイドラインに関する Q&A 令和 8 年 3 月更新。
    Q1-7、Q2-14、Q3-9、Q3-10、Q6-10〜Q6-12(厚生労働省PDF)
  • 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書 第 6 版。
    事例(25)、(27)〜(31)、(36)、(37)(厚生労働省PDF)

公表された調査報告書などの公開情報をもとに執筆しています。記載の経緯や数値は掲載時点のものです。 法令の適用は個別の事情で異なります。判断に迷うときは、所管の自治体の相談窓口へご相談ください。 内容の誤りは訂正受付窓口からお知らせください。