第2章 書いてはいけない 8 つ

執筆者/監修

菅沼 大樹 SUGANUMA Daiki

株式会社ウェブリク 代表取締役

情報処理安全確保支援士(国家資格 第024888号)
医業経営コンサルタント(登録番号8645号)

国立大学法人 電気通信大学卒。
大手 SIer でのシステム開発とシンガポールの広告代理店でのマーケティングを経て、2016年に株式会社ウェブリクを設立。病院専門のホームページ制作と採用支援に取り組む。

病院のホームページに「地域 No.1」「患者様の声」と書いてよいのでしょうか。
医療法とガイドラインは、書いてはいけない広告を 8 つの区分で定めています。
この章では、8 つを原文の番号のまま並べ、病院のサイトで起こりやすい例と、直し方を見ていきます。

禁止される広告は 8 つ(原文の番号で)

厚生労働省の医療広告等ガイドライン(厚生労働省PDF)の第 3-1 は、禁止される広告を(1)から(8)の 8 つに分けています。
(4)の公序良俗に反する広告は病院の実務で出番がなく、厚生労働省のネットパトロールの集計でも 0 件でしたので、この章では残りの 7 つを中心に見ます。
カードの番号は原文の番号です。

  • (1)虚偽広告事実と違うことを書く広告。
    8 つのうちこれだけは、命令を待たずに直接罰則の対象になります。
    例: 「絶対安全な手術です」「厚生労働省の認可した〇〇専門医」「加工した治療前後の写真」「根拠のない満足度 〇%」ガイドライン p.7〜8
  • (2)比較優良広告ほかの医療機関より優れている旨を書く広告。
    事実であっても、最上級の表現は禁止されます。
    例: 「日本一」「No.1」「県内一の医師数」「日本有数の実績」「著名人も受診」ガイドライン p.8
  • (3)誇大広告事実を不当に誇張したり、人を誤認させたりする広告。
    実際に誤認した人がいなくても、誤認させる印象があれば該当します。
    例: 「知事の許可を取得した病院です」「〇〇センター」(後述)、古い医師数、「比較的安全な手術です」「今すぐ受診ください」ガイドライン p.9〜10
  • (4)公序良俗に反する広告わいせつな図画や、差別を助長する表現を使った広告。ガイドライン p.10
  • (5)広告可能事項以外の広告法律と告示で書けると決められた事項以外を書く広告。
    ネットパトロールの違反で最も多い区分です。
    ホームページでは、限定解除の要件を満たせば書けます(第 4 章)。
    例: 「専門外来」「死亡率や術後生存率」「未承認の医薬品による治療」ガイドライン p.10〜11
  • (6)患者の体験談治療の内容や効果に関する患者の主観的な体験談を、受診の誘引のために載せる広告。
    省令で禁じられ、限定解除でも書けません。
    例: 「患者様の声」のページ、口コミサイトからの転載、直筆アンケートの写真ガイドライン p.11、省令第 1 条の 9
  • (7)治療の前後の写真誤認させるおそれがある治療前後の写真。
    治療の内容、費用、期間と回数、リスクの説明を同じ場所に付ければ、該当しません。
    例: 写真だけの症例紹介、説明をリンク先に置いたものガイドライン p.11
  • (8)その他(品位を損ねる広告、他法令)費用を強調した広告、医療と関係ない品物での誘引、ふざけた表現。
    景品表示法や薬機法など、ほかの法令で禁止される広告。
    例: 「今なら〇円」「〇% OFF」「無料相談をされた方全員にプレゼント」「医薬品〇〇錠を処方できます」ガイドライン p.11〜13

令和 7 年度のネットパトロールで違反ありとされた 1,842 サイトの違反 5,225 件を種類別に見ると、「広告可能事項以外」が 1,595 件、「誇大」が 1,215 件で、この 2 つで半分を超えます。
病院に近い内科系の 258 サイトでも、広告可能事項以外が 240 件、誇大が 176 件で、同じ傾向です。

図 2-1 違反の種類別の件数(令和 7 年度)。広告可能事項以外と誇大で半分を超える
(5)広告可能事項以外1,595 件(31%)(3)誇大1,215 件(23%)(8)その他766 件(15%)(7)治療の前後の写真745 件(14%)(2)比較優良484 件(9%)(6)体験談274 件(5%)(1)虚偽146 件(3%)違反あり 1,842 サイト、違反 5,225 件(1 サイト平均 2.8 件)。番号はガイドライン第 3-1 の区分。(4)公序良俗は 0 件。2026 年 2 月 28 日時点。通報受付と能動監視の合計。

2026 年 2 月 28 日時点。
通報受付と能動監視の合計。
(4)公序良俗は 0 件のため資料では省略。
出典: ネットパトロール事業について(令和 7 年度)(厚生労働省PDF)第 7 回 医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会 資料 2

事実でも書けない「日本一」「県内一」

病院のサイトで最初に見直したいのは、比較優良広告です。
ガイドラインは次のように書いています。

例えば、「日本一」、「№1」、「最高」等の最上級の表現その他優秀性について著しく誤認を与える表現は、客観的な事実であったとしても、禁止される表現に該当する。

医療広告等ガイドライン 第 3-1 の(2)比較優良広告(厚生労働省PDF p.8)

本当に県内で医師数が一番多くても、「県内一の医師数を誇ります」とは書けません。
原文がこの言い回しをそのまま例に挙げています。
「地域で有数」「日本有数の実績」も、ほかの医療機関と比べて優れている旨の表現なので同じです。
「最先端」「最適」は誇大広告、「最良」「最上」は比較優良広告にあたると、Q&A が答えています(医療広告等ガイドラインに関する Q&A(厚生労働省PDF)Q2-2、Q2-3)。

では、医師数や手術件数のような事実はどう書けばよいのでしょうか。
ガイドラインは、最上級の表現でなければ、客観的な事実の記載を妨げるものではないとしています。
ただし、求められれば裏付けとなる合理的な根拠を示し、客観的に実証できる必要があります。
調査結果を引くときは、出典、調査の実施主体、調査の範囲、実施時期を併記します。
「医師 〇名(2026 年 4 月 1 日現在)」のように、数と時点をそのまま書くのが基本です(第 3 章)。

書けない例(架空)

県内一の医師数を誇る、地域 No.1 の総合病院です。

「県内一」「No.1」は、事実であっても比較優良広告にあたります。

書ける例(架空)

常勤医師 85 名、看護師 420 名(2026 年 4 月 1 日現在)。

数と時点をそのまま書く。
従業者数は年に 1 度は更新し、年報などでも公表します(第 3 章)。

著名人との関係を強調する表現も比較優良広告です。
「〇〇選手が当院で手術を受けました」「著名人も推薦」は書けません(事例解説書(厚生労働省PDF)事例(7))。

「〇〇センター」と「知事の許可」は誇大広告の例

誇大広告の例として、ガイドラインは病院にかかわる 2 つを挙げています。
1 つは「知事の許可を取得した病院です!」です。
病院の開設には知事の許可が要るので、許可があるのは当然のことです。
それを特別なことのように強調すると、誤認させる表現になります。

もう 1 つが「〇〇センター」です。
原文は、次の場合に限って書けるとしています。

「○○センター」との名称については、救命救急センター、休日夜間急患センター、総合周産期母子医療センター等、一定の医療を担う医療機関である場合、又は当該診療について地域における中核的な機能や役割を担っていると都道府県等が認める場合に限るものとし、それ以外の場合については、誇大広告として取り扱う。

医療広告等ガイドライン 第 3-1 の(3)誇大広告(厚生労働省PDF p.9)

ただし、同じ箇所に病院向けの大事な一文があります。
「医療機関が提供する医療の一部を担当する部門名として患者向けに院内掲示しているものをそのままウェブサイトに掲載している場合等には、原則として、内容が誇大なものとして取り扱わない」というものです。
院内の案内板に「内視鏡センター」と出している部門を、サイトの診療案内にそのまま載せる形なら、原則として誇大とは扱われません。

  • 書ける救命救急センター、休日夜間急患センター、総合周産期母子医療センターなど、法令や国の事業で一定の医療を担う場合。ガイドライン p.9
  • 書けるその診療について、地域の中核的な機能を担っていると都道府県等が認める場合。ガイドライン p.9、Q6-5
  • 原則として誇大とは扱われない患者向けに院内掲示している部門名を、そのままサイトに載せている場合。ガイドライン p.9、Q1-13

「〇×病院 〇〇センター」のように、病院の名称と併せて書く場合も同じ 2 つの場合に限られます(Q6-5)。
事例解説書の事例(8)は、歯科医院が「〇〇インプラントセンター」と名乗った例を誇大広告としています。

患者の声と治療の前後の写真は、省令の禁止事項

省令第 1 条の 9限定解除でも解けない 2 つ患者の体験談「患者様の声」のページ治療の前後の写真だけ写真だけの症例紹介前後の写真と説明説明を同じ場所に付ける

「患者様の声」のページは、病院のサイトで最も見直しの多い箇所です。
医療法施行規則第 1 条の 9 は、患者の主観や伝聞に基づく治療の内容や効果に関する体験談と、誤認させるおそれがある治療前後の写真の広告を禁じています。
ガイドラインは、体験談の記述の内容が広告可能な範囲であっても認められないとしています。
第 4 章の限定解除でも、この 2 つは解けません。

事例解説書は、体験談の 5 つの型を挙げています。
どれも病院のサイトで起こりえます。

  • 「当院に寄せられた体験談を掲載しております」と、体験談のページを作る(事例(16))。
  • 口コミサイトの投稿を転載する。
    有利な口コミだけを抜粋して載せるのは、虚偽か誇大にもあたる(事例(17)、Q2-9)。
  • 職員のブログで、職員自身の体験や、患者の感想を代わりに書く(事例(18))。
  • 患者が直筆で書いたアンケートを、写真や PDF にして載せる(事例(20))。
  • 医師の症例紹介の中で、「〇年間悩まされていた痛みが和らいだ」と患者の言葉を載せる(事例(21))。

一方で、患者が自分の SNS や口コミサイトに書いた感想は、病院が費用を負担したり掲載を依頼したりしていなければ広告ではありません(ガイドライン p.11、Q2-11)。
病院ができるのは「転載しない」「依頼しない」「編集させない」の 3 つです。
口コミサイトの運営者に、否定的な投稿を消して肯定的な投稿を上に出すよう頼むと、誘引性が生じて広告になります(事例(19))。
この境目は第 5 章で扱います。

治療前後の写真は、写真だけを載せることが問題です。
通常必要な治療の内容、費用、期間と回数、主なリスクと副作用の説明を写真と同じ場所に付ければ、禁止の対象になりません。
説明をリンク先に置いたり、利点より極端に小さな文字にしたりする形は認められません(ガイドライン p.11、事例(22)と(24))。
術前だけ、術後だけの写真も同じ扱いです(Q2-8)。

費用の強調、根拠のない数字、ほかの法令

ガイドラインの(8)は、品位を損ねる広告を「厳に慎むべき」としています。
「今なら〇円」「期間限定で 50% オフ」「〇〇治療し放題プラン」のような費用の強調と、「無料相談をされた方全員に〇〇をプレゼント」のような医療と関係ない品物での誘引が例です。
健診や人間ドックの案内で、価格を太字や下線で分かりやすく示すこと自体は差し支えありません(Q2-5)。
前面に押し出すかどうかが境目です。

数字の根拠も見直します。
「患者満足度 95%」は、調査の結果そのものを広告できないため書けません。
調査を実施している旨と、結果の入手方法は書けます(ガイドライン p.29〜30、Q3-22)。
「2 週間で 90% の患者に効果」のような治療効果の数字は、個々の患者で結果が異なるため書けません(Q2-16)。

医療広告以外の法令にも注意が要ります。
ガイドラインは、景品表示法、薬機法、健康増進法、不正競争防止法を挙げ、「他法令に違反するとの理由や他法令に基づく処分を受けるとの理由で、法の広告違反が免責されることはない」としています(p.12〜13、p.40)。
医薬品の販売名を書く「〇〇錠を処方できます」は薬機法の広告基準にも触れます。
患者の写真を載せるときは、個人情報の扱いも別に確かめます。

自院で確かめること

  • サイト内検索で「No.1」「一番」「有数」「最新」「最先端」「センター」を探し、それぞれがこの章のどの区分にあたるかを見る。
  • 「患者様の声」「体験談」「お客様の声」のページと、症例紹介の中の患者の言葉、職員ブログの感想の代筆がないかを見る。
  • 健診や人間ドックの案内で、価格の割引やキャンペーンを前面に出していないか、満足度の数字を出していないかを見る。

言葉ごとの区分と出典は、表現の早見で引けます。
判断に迷うときは、所管の自治体の相談窓口(医療広告相談窓口一覧(厚生労働省PDF))へ相談します。

この章の一次資料

  • 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)令和 8 年 3 月 30 日最終改正。
    第 3-1 禁止される広告 p.7〜13(厚生労働省PDF)
  • 医療広告等ガイドラインに関する Q&A 令和 8 年 3 月更新。
    Q2-1〜Q2-3、Q2-5、Q2-8、Q2-9、Q2-11、Q2-16、Q3-22、Q6-5(厚生労働省PDF)
  • 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書 第 6 版 令和 8 年 3 月。
    事例(5)〜(8)、(16)〜(24)、(34)(厚生労働省PDF)
  • 医療法施行規則 第 1 条の 9(e-Gov 法令検索)
  • ネットパトロール事業について(令和 7 年度)第 7 回 医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会 資料 2、2026 年 3 月 26 日(厚生労働省PDF)

公表された調査報告書などの公開情報をもとに執筆しています。記載の経緯や数値は掲載時点のものです。 法令の適用は個別の事情で異なります。判断に迷うときは、所管の自治体の相談窓口へご相談ください。 内容の誤りは訂正受付窓口からお知らせください。