用語集 — 講座に出る言葉
病院の医療広告規制講座に出る言葉を、6 つの区分で並べました。
各語に、出てくる章を付けています。
五十音順ではなく、法令と資料、広告の判定、禁止される広告、書ける実績、自由診療と限定解除、監視と指導の順です。
法令と資料
医療法、省令、告示と、厚生労働省の 3 つの資料
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医療法第 6 条の 5
医療広告の規制の根拠になる条文。
第 1 項が、病院に限らず誰でも虚偽の広告をしてはならないと定め、第 2 項が比較優良と誇大と公序良俗と省令の基準、第 3 項が広告に書ける事項(広告可能事項)を 16 の号で定める。
「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」という言い方で、ホームページも対象にしている。 -
医療法施行規則
医療法を具体化する厚生労働省令。
第 1 条の 9 が患者の体験談と治療の前後の写真の広告を禁じ、第 1 条の 9 の 2 が限定解除の 4 つの要件を定める。
講座で「省令」と書いているのはこの規則。 -
広告告示
医療法第 6 条の 5 第 3 項の委任を受けて、広告に書ける事項の細目を定めた厚生労働省告示(平成 19 年告示第 108 号)。
専門医の資格の要件、書ける治療の方法、手術件数などの結果、健康診査や予防接種の実施などを定める。
正式名は「医業若しくは歯科医業若しくは助産師の業務又は病院、診療所若しくは助産所に関して広告することができる事項」。 -
医療広告等ガイドライン
厚生労働省が示す、医療広告の規制の解釈の指針。
正式名は「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」。
令和 8 年 3 月 30 日の最終改正で、名前が「医療広告ガイドライン」から「医療広告等ガイドライン」に変わった。
講座の「p.」はこの原文の印字ページ。 -
医療広告等ガイドラインに関する Q&A
厚生労働省が、ガイドラインの個別の疑問に答えた資料。
平成 30 年 8 月に作られ、令和 8 年 3 月に更新された。
講座の「Q2-3」のような番号はこの資料の質問の番号。
答えの末尾の「(P.〇)」はガイドラインのページを指す。 -
事例解説書
ネットパトロールで見つかった違反の型を、架空の画面と改善例で示した厚生労働省の資料。
正式名は「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」で、令和 8 年 3 月の第 6 版は 49 の事例を載せる。
講座の「事例(8)」のような番号はこの資料の事例の番号。 -
医療広告相談窓口一覧
厚生労働省が公表している、都道府県と保健所設置市と特別区の医療広告の相談窓口の一覧。
病院の相談先は都道府県の担当課、診療所は保健所設置市や特別区、という分担の自治体が多い。
自院の所管はこの一覧で確かめる。 -
指導と措置の実施手順書のひな型
厚生労働省が令和 6 年 8 月 23 日に自治体へ示した、行政指導から命令までの標準的な期限を含む手順書の見本。
改善の依頼から 2 か月以内の改善報告、覚知から 2〜3 か月以内の行政指導の完了、6 か月以内の措置命令、1 年を超えない是正の完了が目安として書かれている。
自治体ごとの手順書は異なりうる。
広告の判定
何が広告になるかを決める言葉
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誘引性
医療広告の 3 つの要件の 1 つで、「患者の受診等を誘引する意図があること」。
情報物の客体の利益を期待して誘引しているかどうかで判断する。
新聞記者の記事や患者が自分で書く口コミには誘引性がなく、病院が費用を負担したり依頼したりすると誘引性が生じる。 -
特定性
医療広告の 3 つの要件の 1 つで、病院や医師の名称が特定できること。
病院名がなくても、住所や電話番号や URL で病院が分かれば特定性がある。
「これは広告ではありません」の断り書きがあっても変わらない。 -
認知性
一般の人が広告と気付かずに見に来るものではない、という性質。
2018 年 6 月の改正前は、ホームページには認知性がないという理由で広告の規制の対象外だった。
改正で規制の対象が「誘引するための手段としての表示」に広がり、ホームページも対象になった。 -
広告可能事項
医療法第 6 条の 5 第 3 項と広告告示で、広告に書いてよいと定められた事項。
名称、診療科名、法令の指定、病床数と従業者数、医師の氏名と略歴と専門医、施設基準の届出、手術件数などの結果、健康診査の実施など。
ホームページでは、限定解除の要件を満たせばこの範囲の外も書ける。 -
何人も(なんぴとも)
医療法第 6 条の 5 の主語で、病院に限らず誰でも、という意味。
規制の対象は医療機関だけでなく、広告代理店、サイトの制作会社、ポータルサイトの運営会社、患者や一般の人も含む。
ガイドラインは、広告代理店や媒体は広告依頼者とともに指導の対象になり得るとしている。
禁止される広告
第 2 章の 8 つの区分に出る言葉
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虚偽広告
事実と違うことを書く広告。
8 つの区分のうち唯一、命令を待たずに直接罰則の対象になる。
「絶対安全な手術」「厚生労働省認定〇〇専門医」「加工した治療前後の写真」「保有していない機器のイメージ画像」が例。 -
比較優良広告
ほかの医療機関より優れている旨を書く広告。
「日本一」「No.1」「最高」のような最上級の表現は、客観的な事実であっても禁止される。
「県内一の医師数」「日本有数の実績」、著名人の推薦もこれにあたる。 -
誇大広告
事実を不当に誇張したり、人を誤認させたりする広告。
一般の人が受ける印象と実際の内容に違いがあれば足り、実際に誤認した人がいる必要はない。
「知事の許可を取得した病院」、条件に当たらない「〇〇センター」、古い医師数、「最先端」「最適」、施設基準の届出を「認定」と書くことが例。 -
体験談
患者自身の体験や家族からの伝聞に基づく主観的な感想を、受診の誘引のために紹介すること。
医療法施行規則で禁じられ、限定解除でも書けない。
「患者様の声」のページ、口コミサイトからの転載、直筆アンケートの写真、職員による代筆、動画の患者インタビュー、SNS での他者の投稿の引用がこれにあたる。 -
治療の前後の写真
治療の内容や効果について誤認させるおそれがある治療前後の写真。
医療法施行規則で禁じられる。
写真と同じ場所に、通常必要な治療の内容、費用、期間と回数、主なリスクと副作用の説明を付ければ、禁止の対象にならない。
説明をリンク先や極端に小さな文字にする形は認められない。 -
品位を損ねる広告
ガイドラインが「厳に慎むべき」とする広告。
「今なら〇円」「〇% OFF」のような費用の強調、「無料相談をされた方全員にプレゼント」のような医療と関係ない品物での誘引、ふざけた表現が例。
禁止の 8 つの区分の(8)にあたる。 -
〇〇センター
救命救急センターのように法令や国の事業で一定の医療を担う場合か、地域の中核的な機能を担うと都道府県等が認める場合に限り書ける名称。
それ以外は誇大広告として扱われる。
ただし、患者向けに院内掲示している部門名をそのままサイトに載せる場合などは、原則として誇大とは扱われない。
書ける実績
第 3 章の広告可能事項に出る言葉
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法令の指定
法令の規定に基づき一定の医療を担うものとして受けた指定。
臨床研修指定病院、労災保険指定病院、感染症指定医療機関などが例で、指定を受けた旨と法令上の名称と略称を書ける。
救急病院や災害拠点病院のような国の事業に基づくものも、告示で書けると定められている。 -
施設基準の届出
診療報酬の施設基準を満たす保険医療機関として届け出たこと。
「各基準に適合している旨、当該基準の内容や届出日等」まで書ける。
病院が届け出るもので国が認定するものではないので、「厚生労働省に認定」「国の認証」と書くと誇大広告になる。 -
専門医
書ける専門医は 2 つ。
日本専門医機構と日本歯科専門医機構が認定した基本的な診療領域の専門医と、厚生労働大臣に届け出た学会の専門医(経過措置で当分の間)。
どちらも認定した団体の名前と資格名を併せて書く。
団体名のない「〇〇専門医」は誇大広告、「厚生労働省認定〇〇専門医」は虚偽広告。 -
手術件数
病院で行った手術の件数。
医療の提供の結果として書けるが、期間を暦月の単位で併記し、サイトや年報で公表していることが条件。
1 年ごとに集計して複数年を示すことが望ましい。
医師個人の手術件数は広告可能事項ではなく、ホームページでは限定解除と根拠の実証が要る。 -
平均在院日数
入院患者が平均して何日入院したかを示す数。
医療の提供の結果として、病院全体のほか、病床の区分、病棟、診療科、疾病ごとにも書ける。
手術件数と同じく、期間の併記と公表が条件で、計算式はガイドラインが示している。 -
職員数
医師や看護師などの従業者の数。
病床数とともに書けるが、いつの時点の数かを月の単位で併記し、サイトや年報で公表し、少なくとも年に 1 度は更新する。
実態より多い数のままにしておくと誇大広告になる。
自由診療と限定解除
第 4 章の人間ドックと自費診療のページに出る言葉
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自由診療
医療保険各法と公費負担医療の給付の対象にならない検査、手術、そのほかの治療。
病院では人間ドックと健診、自費の予防接種、先進医療の自費の部分、自費のリハビリテーションが当たる。
ホームページに書くときは、限定解除の 4 つの要件のうち③の内容と費用、④のリスクと副作用も要る。 -
限定解除
ホームページのように患者が自ら求めて入手する情報では、要件を満たせば広告可能事項の限定を解いてよい、という仕組み。
要件は①患者が自ら求めて入手する情報であること、②問い合わせ先の明示、③自由診療の内容と費用、④自由診療のリスクと副作用の 4 つ。
虚偽、比較優良、誇大、体験談、前後の写真の禁止は解けない。
検索広告とバナー広告は①を満たさない。 -
問い合わせ先
限定解除の要件②で明示する、電話番号かメールアドレス。
予約専用で問い合わせできる旨のない番号、自動音声だけで折り返しがないもの、受付の自動返信だけのメールは要件を満たさない。
極端に小さい文字や背景と同系統の色で載せるのも認められない。 -
標準的な費用
自由診療について書くときに載せる、通常必要な治療の費用。
明確でないときは、発生頻度の高い追加費用を含めて、最低金額から最高金額までの範囲を示す。
承認された医薬品や医療機器を使う自由診療は、保険が適用されない旨とともに併記することが告示の条件。 -
未承認の医薬品
国内で承認を受けていない医薬品や医療機器。
承認された効能と違う目的での使用(適応外使用)も同じ扱い。
ホームページに書くときは、限定解除に加えて、未承認である旨、入手経路、国内の承認品の有無、諸外国の安全性の情報、副作用被害救済制度の対象にならない旨の 5 つを明示する。 -
健康診査
人間ドックや健診のこと。
実施している旨は広告告示で書けると定められ、脳ドックも含まれる。
「遺伝子検査」「アンチエイジングドック」は健康診査として書けない。
コースの内容や費用まで書くページは、限定解除の要件を満たして書く。 -
検索広告
検索サイトでスポンサーとして表示される広告や、費用を払って検索結果の上位に表示させたもの。
いわゆるリスティング広告。
バナー広告とともに限定解除の要件①を満たさないので、書けるのは広告可能事項の範囲だけ。
一律に禁止されているわけではない。
監視と指導
第 6 章の通知から命令までに出る言葉
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ネットパトロール
厚生労働省が平成 29 年度から委託事業者に行わせている、医療機関のサイトと SNS の監視。
通報の受付と能動監視で見つけた違反のおそれを医療機関に通知し、改善の確認を 2 回行い、改善がなければ所管の自治体に情報提供する。
令和 7 年度は 2 月までに 1,819 サイトに通知した。 -
能動監視
ネットパトロールのうち、通報を待たずにキーワードで検索してサイトと SNS を調べる監視。
令和 4 年度の 63 サイトから令和 7 年度は 413 サイトに増え、ウェブサイトのほか YouTube、Instagram、X、TikTok も対象。
令和 7 年度から AI を使った違反チェックの仕組みも入った。 -
行政指導
自治体が違反のおそれのある広告について、中止や是正を求めること。
命令ではなく、通常はここから始まる。
手順書のひな型では、改善の依頼から 2 か月以内の改善報告と、覚知から 2〜3 か月以内の完了が目安。
この段階で直せば、命令にも罰則にも進まない。 -
立入検査
医療法第 6 条の 8 第 1 項に基づき、自治体の職員が広告をした者の事務所に立ち入り、広告に関する文書などを検査すること。
同じ項の報告命令とともに、行政指導の次の段階。
検査を拒んだり、報告を怠ったり虚偽の報告をしたりすると、20 万円以下の罰金の対象になる。 -
中止命令又は是正命令
医療法第 6 条の 8 第 2 項に基づき、期限を定めて広告の中止や内容の是正を命じること。
行政指導に従わない場合や違反を繰り返す悪質な事例が対象で、弁明の機会がある。
命令に従わないと 6 か月以下の拘禁刑又は 30 万円以下の罰金の対象になり、原則として事例が公表される。 -
拘禁刑
刑法の改正で懲役と禁錮を一本化した刑。
医療法の罰則は現行法で「六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金」(第 87 条)。
ガイドラインと手順書のひな型の本文は改正前の「懲役」の表記のままなので、講座は現行の法律の言い方で書いている。 -
オンライン診療受診施設
患者がオンライン診療を受けるための施設で、令和 7 年の医療法改正で創設され、2026 年 4 月 1 日から制度が始まった。
これを受けてガイドラインの名前が「医療広告等ガイドライン」になり、受診施設の広告の章が加わった。
受診施設の広告は、医療を提供するのは医療機関であることを明示する必要がある。
厚生労働省の医療広告等ガイドライン(令和 8 年 3 月 30 日最終改正)、Q&A、事例解説書と、医療法と施行規則と広告告示の言葉を、事務長向けに言い換えたものです。
正確な定義は各資料を参照してください。
法令の適用は個別の事情で異なります。判断に迷うときは、所管の自治体の相談窓口へご相談ください。