第6章 通知が届いたら、そして年に一度の点検

執筆者/監修

菅沼 大樹 SUGANUMA Daiki

株式会社ウェブリク 代表取締役

情報処理安全確保支援士(国家資格 第024888号)
医業経営コンサルタント(登録番号8645号)

国立大学法人 電気通信大学卒。
大手 SIer でのシステム開発とシンガポールの広告代理店でのマーケティングを経て、2016年に株式会社ウェブリクを設立。病院専門のホームページ制作と採用支援に取り組む。

ある日、医療機関ネットパトロールの名で、サイトの表現についての通知が届いたら、何をすればよいのでしょうか。
この章では、通報から自治体の指導までの流れ、通知が届いたときの初動、行政指導から命令と罰則までの段階、相談先、そして年に一度の点検を見ていきます。
恐れる必要はありませんが、放置してはいけない、というのがこの章の結論です。

通報から自治体の指導までの流れ

厚生労働省は平成 29 年度から、委託事業者による医療機関ネットパトロールを行っています。
流れは、①サイトと SNS の監視(通報の受付と能動監視)、②違反のおそれがある医療機関への通知と自主的な見直し、③改善が認められない医療機関を所管する自治体への情報提供、④追跡調査です(分科会の資料 p.2)。
令和 7 年度の数字で追うと次のとおりです。

図 6-1 ネットパトロールの通知から自治体の指導までの流れ(令和 7 年度)
審査2,092違反あり1,842医療機関に通知1,819改善確認①で改善か広告中止1,238改善確認②でも改善不足389自治体へ情報提供自治体が指導377審査 2,092 サイトのうち違反なしは 250。通知した 1,819 サイトのうち、1 回目の確認で 1,238 サイトが改善か広告の中止。2 回目の確認でも改善が不十分だった 389 サイトのうち 377 サイトを所管の自治体へ情報提供。残りは医療機関が対応中。単位: サイト。2026 年 2 月 28 日時点。通報受付と能動監視の合計。主な流れだけを示し、対応中の数は省いた。

2026 年 2 月 28 日時点。
通報受付と能動監視の合計。
出典: ネットパトロール事業について(令和 7 年度)(厚生労働省PDF)第 7 回 医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会 資料 2

審査した 2,092 サイトのうち 1,842 サイトに違反があり、1,819 サイトに通知が送られました。
1 回目の改善確認で 1,238 サイトが改善か広告の中止をしています。
2 回目の確認でも改善が不十分だった 389 サイトのうち 377 サイトが、自治体へ情報提供されました。
通知が届いた医療機関の約 7 割は 1 回目で改善しており、放置した医療機関が自治体に渡っています。

令和 5 年度までの資料では、自治体に情報提供された医療機関は年に 80〜195 件で、累計 729 件のうち 416 件が改善、59 件が広告を中止し、254 件が対応中でした(第 4 回分科会の資料)。

通知が届いたときの初動

通知には、対象のページと、該当するおそれのある区分が示されます。
初動は 4 つです。

  • 1放置しない改善の確認は 2 回あります。
    2 回目でも改善がなければ、所管の自治体に情報提供されます。
  • 2該当箇所を特定する通知の内容を第 2 章と第 3 章、表現の早見で照らし、同じ型の表現がほかのページや SNS にないかも見ます。
  • 3制作会社と期限を決める修正の担当と期限を決め、修正した日付と内容を記録します。
    契約に分担があれば、そのとおりに動けます(第 5 章)。
  • 4改善したら報告する通知の指示に従って改善を報告します。
    判断に迷う箇所は、所管の自治体の窓口に相談します。

期限の目安は、自治体向けの手順書にあります。
厚生労働省が令和 6 年 8 月に示した「指導と措置の実施手順書のひな型」(厚生労働省PDF)は、自治体が行政指導として改善を依頼してから 2 か月以内を目途に改善の報告を求め、違反を知ってから 2〜3 か月以内を目途に行政指導による改善を完了させる、としています。
手順書は自治体が自分の手順書を作るときの参考で、自治体ごとに異なりますが、「依頼から 2 か月」が 1 つの目安です。

行政指導から命令、罰則まで

自治体に情報提供されたあとの流れは、ガイドラインの第 5 が定めています(医療広告等ガイドライン(厚生労働省PDF)p.40〜41)。
段階は 5 つです。

  1. ア 調査と行政指導通常はまず行政指導として、広告の中止や内容の是正を求めます。
    報告書の徴収や、書面による改善指導が行われます。
  2. イ 報告命令又は立入検査医療法第 6 条の 8 第 1 項。
    必要な報告を命じ、または職員が事務所に立ち入って文書などを検査します。
  3. ウ 中止命令又は是正命令医療法第 6 条の 8 第 2 項。
    行政指導に従わない場合や、違反を繰り返す悪質な事例が対象で、弁明の機会があります。
    手順書の目安は、違反を知ってから 6 か月以内です。
  4. エ 告発虚偽広告で行政指導に応じない、報告命令に応じない、立入検査を拒む、命令に従わない場合に考慮されます。
  5. オ 行政処分管理者の変更命令(医療法第 28 条)、開設許可の取消しや閉鎖命令(医療法第 29 条第 1 項)。
    手順書は、1 年を超えない範囲で是正を完了させることが望ましいとしています。

罰則は医療法に定められています。
虚偽広告、麻酔科の広告で許可を受けた医師の氏名を併記しない場合、中止命令や是正命令に従わない場合は、6 か月以下の拘禁刑又は 30 万円以下の罰金です(第 87 条)。
報告命令に対して報告を怠ったり虚偽の報告をしたり、立入検査を拒んだりした場合は、20 万円以下の罰金です(第 89 条)。
ガイドラインと手順書の本文は改正前の「懲役」の表記のままですが、現行の法律は「拘禁刑」です。

命令の宛先は、病院の場合はその開設者又は管理者です。
広告代理店や媒体の場合はその代表者です(p.41〜42)。
行政指導に従わず、命令や告発に至った場合、自治体は原則として事例を公表します(p.42)。

ここで覚えておきたいのは、段階の構造です。
虚偽広告以外の違反は、行政指導を経て命令に至るまで罰則がありません。
通知や指導の段階で直せば、命令にも罰則にも進みません。
一方で、ほかの法令との関係について、ガイドラインは次のように書いています。

他法令に違反するとの理由や他法令に基づく処分を受けるとの理由で、法の広告違反が免責されることはない。

医療広告等ガイドライン 第 5 の 3 他法令との関係(厚生労働省PDF p.40)

相談先は、所管の自治体の窓口

相談先所管の自治体の窓口病院都道府県(多くの自治体)診療所保健所設置市、特別区自院の所管窓口一覧の備考で確かめる相談先ではない通報フォームとホットライン

Q&A は、違反を見つけたときや疑問があるときの相談先を、各医療機関を所管する自治体や保健所としています(医療広告等ガイドラインに関する Q&A(厚生労働省PDF)Q5-1)。
ガイドラインは、窓口として医療安全支援センターや保健所の医療法担当部署を想定しています(p.39)。
厚生労働省は、都道府県、保健所設置市、特別区の窓口の一覧を公表しています(医療広告相談窓口一覧(厚生労働省PDF))。
一覧の備考を見ると、病院に関する相談は都道府県、診療所は保健所設置市や特別区、という分担の自治体が多くあります。
自院の所管は一覧で確かめます。

ネットパトロールの通報フォームは、違反を通報するためのもので、自院の相談先ではありません。
消費者ホットラインは、患者の相談先です。

年に一度の点検と、院内の体制

ガイドラインは平成 30 年の施行から毎年のように改正され、Q&A と事例解説書も更新されています。
主な出来事は次のとおりです。

  • 平成 24 年 9 月医療機関ホームページガイドライン(自主的な取組の指針)
  • 平成 27 年 7 月消費者委員会の建議
  • 平成 29 年医療法の改正(法律第 57 号)
  • 平成 30 年 6 月 1 日改正法の施行。
    ホームページが広告に。
    医療広告ガイドライン、8 月に Q&A
  • 令和 3 年 7 月事例解説書の作成。
    10 月 1 日に広告告示の改正(専門医の要件)
  • 令和 5 年 2 月事例解説書の改訂。
    専門性の資格の一覧の改正(2 月 17 日)。
    10 月にも事例解説書の改訂
  • 令和 6 年 3 月事例解説書の改訂。
    8 月 23 日に指導と措置の実施手順書のひな型
  • 令和 7 年 3 月事例解説書の改訂。
    医療法の改正(法律第 87 号。
    オンライン診療受診施設)
  • 令和 8 年 3 月 30 日医療広告等ガイドラインに名称を変えて最終改正。
    Q&A の更新、事例解説書 第 6 版。
    4 月 1 日から適用

院内の体制は、3 つで足ります。

  • 更新のたびの確認者。
    ページを足すとき、投稿するとき、広告を出すとき、公開前に確かめる人を 1 人決めます。
    第 2 章と第 3 章、表現の早見、自己点検が道具です。
  • 年に 1 回の版の確認。
    3 月ごろの改正のあとに、ガイドライン、Q&A、事例解説書の版を確かめ、自己点検をやり直します。
  • 通知の受け口。
    ネットパトロールや自治体からの通知を誰が受け、誰が制作会社に連絡するかを決めておきます。

最後に 1 つ。
点検を終えても、「医療広告ガイドライン遵守」「適合」のような印をサイトに貼らないでください。
Q&A は、ガイドラインを遵守していることは特段強調すべきことではなく、過度な記載は誇大広告に該当する可能性があるとしています(Q6-13)。
事例解説書の事例(4)は、「厚生労働省 医療広告規制 適合」のような表示を、行政の認証と誤認させるものとして挙げています。
厚生労働省のシンボルマークも使えません。
この講座の自己点検も、合否や適合の印は出しません。

自院で確かめること

  • 制作会社や広告代理店との契約書に、広告規制への対応と修正の分担が書かれているかを見る。
  • ネットパトロールや自治体からの通知を、誰が受けて誰が動くかが決まっているかを見る。
  • ガイドラインの版を最後に確かめたのがいつかを見る。
    今の版は令和 8 年 3 月 30 日最終改正です。

講座の 6 章の観点をまとめて見るには、自院サイトの自己点検が使えます。
判断に迷うときは、所管の自治体の相談窓口(医療広告相談窓口一覧(厚生労働省PDF))へ相談します。

この章の一次資料

  • 医療法 第 6 条の 8、第 28 条、第 29 条、第 87 条、第 89 条(e-Gov 法令検索)
  • 医療広告等ガイドライン 令和 8 年 3 月 30 日最終改正。
    第 5 相談、指導、措置 p.39〜42(厚生労働省PDF)
  • 医療広告等ガイドラインに関する Q&A 令和 8 年 3 月更新。
    Q5-1、Q6-13(厚生労働省PDF)
  • 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書 第 6 版。
    はじめに p.4、事例(4)(厚生労働省PDF)
  • 医療広告ガイドラインに基づく標準的な期限も含めた指導・措置等の実施手順書のひな型 令和 6 年 8 月 23 日 事務連絡(厚生労働省PDF)
  • 各都道府県、保健所設置市及び特別区における医療に関する広告の窓口一覧(厚生労働省PDF)
  • ネットパトロール事業について(令和 7 年度)第 7 回分科会 資料 2、2026 年 3 月 26 日。
    p.2、p.4(厚生労働省PDF)。
    同(令和 5 年度)第 4 回分科会 資料 2-3、2024 年 8 月 22 日(厚生労働省PDF)

公表された調査報告書などの公開情報をもとに執筆しています。記載の経緯や数値は掲載時点のものです。 法令の適用は個別の事情で異なります。判断に迷うときは、所管の自治体の相談窓口へご相談ください。 内容の誤りは訂正受付窓口からお知らせください。