病院と医薬品の講座

病院の薬は、だれが決めて、だれが払っているのか

病院の薬は、だれが決めて、だれが払っているのか。値段を決めるのは国、買うのは病院と薬局、払うのは保険料と税と患者の窓口の負担です。
医薬分業は 1874 年の医制が原則を定めながら定着せず、1974 年の診療報酬改定から進み、処方箋受取率は 2025 年度に 82.2% になりました。
医薬品の流れと費用、医薬分業の歩み、院内処方と院外処方、後発医薬品、安定供給、病院薬剤師、薬価とこれからの順に 7 章で解説します。

解説の元は、厚生労働省の国民医療費(令和 6 年度)、中医協の薬剤費等の年次推移、薬価調査、後発医薬品のロードマップ、医師・歯科医師・薬剤師統計(令和 6 年)、衛生行政報告例、薬剤師偏在指標、医療用医薬品の供給状況、令和 8 年度診療報酬改定の告示と通知、医師法、薬剤師法、薬機法の条文、有識者検討会の報告書、フォーミュラリの通知と、公益社団法人 日本薬剤師会の処方箋受取率の推計です(2026 年 11 月 3 日に確認)。
国民医療費と薬価調査(毎年)、医師・歯科医師・薬剤師統計(2 年ごと)、供給状況(月次)、診療報酬改定(2 年ごと)、ロードマップの点検(2026 年度末)に合わせて更新します。
講座は「国の統計と制度にこう書いてある」までを伝えるもので、個別の医薬品の選び方や、院内処方と院外処方のどちらがよいかを助言するものではありません。

この講座の要点

医薬品が病院と薬局に届くまでの流れと、だれが決めて、だれが払っているか。
国(厚生労働省、中医協)承認(PMDA の審査)、薬価基準への収載(値段を国が決める)、毎年の薬価調査と改定製造販売業者承認を受けて製造し、出荷出荷停止等は国に報告と届出卸売販売業者病院と薬局へ配送価格の交渉(単品単価)病院と薬局薬価より安く買い、薬価で請求院内処方か院外処方か患者窓口で 1〜3 割選定療養の特別の料金だれが払うか: 窓口の負担(1〜3 割)+ 保険料 + 税(国と自治体)財源の仕組みは医療費の見える化講座。本講座は「薬の分」を切り出す薬機法、薬価基準、国民医療費の概況の仕組みを元に病院ドック編集部が整理。

薬機法、薬価基準、国民医療費の概況の仕組みを元に、病院ドック編集部が整理(第 1 章)

  • 薬の値段を決めるのは国、買うのは病院と薬局、払うのは保険料と税と患者です。薬剤費は医療費の 2 割を超え、薬局調剤医療費は国民医療費の 17.6% です。
  • 医薬分業は 1874 年の医制が原則を定めながら定着せず、1974 年の診療報酬改定から進みました。処方箋受取率は 2025 年度に 82.2% です。
  • 後発医薬品の数量シェアは 88.8% に達し、国の関心は、薬価をかけた金額で見た割合(金額シェア)と安定供給へ移りました。2026 年の改定は、後発医薬品の加算を「供給不足に対応する体制」の加算に変えました。

数字で見る

後発医薬品の数量シェアは 88.8%(令和 7(2025)年 9 月)。目標は 2029 年度末に全都道府県で 80% 以上
後発医薬品の数量シェア(薬価調査。各年 9 月。%)0255075100200720112015201920232027%目標 80%2029 年度末2007 年 34.9%2025 年 88.8%金額シェアは 68.7%(2025 年 9 月)。副次目標は 65%数量シェア = 後発医薬品の数量 ÷(後発医薬品のある先発医薬品の数量 + 後発医薬品の数量)。2012 年度までの旧指標とは違う。出典: 厚生労働省「後発医薬品使用促進の推移・現状」、令和 7 年薬価調査結果、ロードマップ(令和 6 年 9 月 30 日)。

2007 年の 34.9% から 2025 年の 88.8% へ。後発医薬品のある先発医薬品と後発医薬品の数量のうち後発医薬品の割合(薬価調査。各年 9 月の取引)。金額シェアは 68.7% で、国は 2024 年から金額シェア 65% の副次目標も置いています。

出典: 厚生労働省 薬価調査(令和 7(2025)年 9 月)、後発医薬品使用促進の推移・現状(2026 年 11 月 3 日取得)

薬にかかわる施設基準を届け出ている病院の割合(全国の診断対象 7,948 院)
  1. 薬剤管理指導料入院患者の薬を薬剤師が管理し指導する体制 65.9%5,235 院
  2. 地域支援・医薬品供給対応体制加算後発医薬品を 75% 以上使い、供給不足への対応と流通改善の体制を持つ。1〜3 の合計 52.0%4,136 院
  3. 病棟薬剤業務実施加算病棟に薬剤師が入り、処方の提案と情報の共有を行う体制。1〜3 の合計 28.1%2,234 院
  4. 抗悪性腫瘍剤処方管理加算がんの薬の処方を管理する体制 16.0%1,268 院
  5. バイオ後続品使用体制加算バイオ後続品(バイオシミラー)を使う体制 9.6%764 院
  6. 周術期薬剤管理加算手術の前後の薬を薬剤師が管理する体制 5.7%453 院
  7. 薬剤業務向上加算薬剤師の研修と、地域の病院への派遣の体制 0.9%70 院

届出の有無は体制の一面です。病院の規模や役割によって、届け出る必要のない基準や、要件を満たせない基準があります。薬剤管理指導料の届出が無い病院にも、薬剤師による調剤と情報の提供はあります。自院の届出は施設基準のページで確かめられます。

出典: 地方厚生局の届出受理医療機関名簿(公表基準日 2026年9月1日 以降)から病院ドックが集計。有効な届出だけを数え、分母は診断対象(20 床以上)の全病院。地域支援・医薬品供給対応体制加算は病院の 1〜3 の合計(薬局の同じ名前の加算は含まない)、病棟薬剤業務実施加算は 1〜3 の合計。

左は厚生労働省の薬価調査(全国の取引の数量)、右は病院ドックが厚生局の名簿から集計した全国の届出率です。使用割合も届出の有無も病院の優劣ではありません。病院ごとの届出は施設基準のページで確かめられます。

章の一覧

  1. 第1章 医薬品はどう届き、だれが払っているか 承認、薬価、製造販売業者、卸、病院と薬局、患者。国民医療費 48.8 兆円のうち薬局調剤は 8.6 兆円(17.6%)、薬剤費は医療費の 21.9%。出来高の薬剤料と DPC の包括。
  2. 第2章 医薬分業の歩み(1874〜2026 年) 1874 年の医制、1889 年の薬律、1956 年の施行、1974 年の処方せん料の引き上げ、2003 年の 50% 超、2015 年の薬局ビジョン、2026 年の改定。法で定めた分業が定着せず、診療報酬で進んだ。
  3. 第3章 院内処方と院外処方: 病院は何を選んでいるか 医師法 第 22 条の原則と 9 つの例外、受取率 82.2% の読み方、病院から見た院内処方と院外処方の違い、門前薬局と敷地内薬局、一般名処方と電子処方箋。是非は書かない。
  4. 第4章 後発医薬品(ジェネリック医薬品)とバイオ後続品 薬価は先発の 5 割、数量シェアは 2007 年の 34.9% から 2025 年の 88.8% へ。2029 年度末の 3 つの目標、長期収載品の選定療養(差額の 2 分の 1)、病院の加算の要件と届出。
  5. 第5章 薬が足りないとき: 安定供給の問題 2020 年 12 月の成分の混入と 2021 年の業務停止、限定出荷と供給停止の合計 20% から 12% へ、少量多品目という構造、薬機法改正(出荷停止等の届出)、病院で決めること。
  6. 第6章 病院の中の薬剤師 薬剤師 32.9 万人のうち病院は 5.8 万人。偏在指標は薬局 1.08、病院 0.80。薬剤管理指導料、病棟薬剤業務実施加算、2026 年の「体制から実績へ」。届出率の横棒。
  7. 第7章 薬価と病院の経営、これから 市場実勢価格と調整幅 2%、2 年ごとから毎年の改定へ、推定乖離率 19.6% から 4.8% へ。DPC の包括と高額な医薬品、海外で使える薬が日本で使えない問題(ドラッグ・ラグとドラッグ・ロス)、2026〜2029 年の予定。

道具

厚生労働省の統計と審議会の資料、告示と通知、法律の条文、公益社団法人 日本薬剤師会の推計をもとに、病院ドック編集部がまとめました。
国が監修したものではありません。
講座は国の統計と制度の原文にもとづく解説で、個別の医薬品の選び方や、院内処方と院外処方のどちらがよいかを助言するものではありません。点数と要件は告示と通知の原文でご確認ください。
内容の誤りは訂正受付窓口からお知らせください。